
みなさんどうも、こんにちは!
僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。
こちらにある比較的新しい2本の論文。
この2本とも日本人研究者たちが発表した研究。
本日はこの2本の研究からみなさんも知っているであろうスポーツのある常識について改めて焦点を当てて深ぼっていきたいと思います。

誰もが聞いたことのある常識。

それこそがケガをした直後やトレーニング後に行う患部を冷やすアイシング。

アイシングと聞いて、こちらの動画を思い出した方もいるかもしれません。
何を隠そう上記の動画は現在でも勘違いしている指導者やコーチが多いアイシングの従来の常識を180度覆した内容。
なんと患部を冷却するアイシングは体のパフォーマンスアップに必須の超回復に悪影響を及ぼす。言葉を換えると、アイシングは体に必須の炎症作用を遅延させる、体の治癒プロセスを遅らせる。つまり、長い目で見ればケアやリカバリーには悪影響を及ぼしているのではないか?というのを専門家の言葉を借りて解説した動画。
よって、アイシングはインターバルが比較的短い予選後の本番など、短期的な回復に焦点が当てられたときにこそ、行うべきである。というのが、ザックリした動画の中身です。
↓より詳しい話は以下をご覧ください↓


そう、アイシングは体の重要な回復プロセスである炎症を遅らせることで結果的に、超回復を妨げる。よって最適なリカバリーに繋がらないという主張。

が、本当にそうなのか!?
今回は科学でよくある「どっちやねん!」と思わずツッコみたくなる紆余曲折の面白い話をみなさんと共有したいと思います。
このブログを最後まで見れば、ケアの極意、アイシングの最新知見がわかる。今からの内容は特にスポーツ現場にいる指導者やコーチはもちろんのこと、選手自身も必ず知っておいた方が良い知識ですので、是非、最後の最後までご覧ください。もしかすると怪我のリスクを減らしたり、怪我からの回復、トレーニングからの超回復を早めるひとつのヒントになるかもしれません。
いつものごとく、実際の一次資料は随時、載せておきます。また、今回は日本人研究者たちが発見した事実ですので、日本語でも読めます。気になる方は是非、実際の一次情報にあたってください。

では早速、行きましょう。

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目次
【マラソン後はおすすめ】軽微な筋損傷に対するアイシングは筋損傷後の再生を促進する
ここにある1本の素晴らしい論文。
アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジオロジー‐レギュラトリー,インテグレイティブ・アンド・コンパラティブ・フィジオロジーという生理学を取り扱う学術誌に載ったこちらの研究。
そのタイトルが
筋線維のごく一部の壊死を伴う骨格筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素‐発現マクロファージの拡大(浸潤)を制限し、筋肉の再成を促進する
という一回聞いただけでは頭にハテナが跳びかうもの。

別にタイトルは聞き流してくれて全然OKです。
この研究結果のメインどころを一言で言えば、アイシングは筋肉の回復に効果的!軽い筋肉のダメージであれば、というもの。
アイシングは筋肉の回復プロセスにおいて効果的であることを世界で初めて「実験的」に示したのが今回のこの研究。

そう、アンチ‐アイシング信者に「いや、それってどうなの?」という反対意見をつきつけたのです。
そして、この研究を行った研究チームこそ、何を隠そう全員日本人。神戸大学大学院、川崎医療福祉大学、朝日大学の合同研究チーム。
そして、著者たちの日本語の論文タイトルのほうがよりスマートで、こんなもの
軽微な筋損傷に対するアイシングは筋損傷後の再生を促進する
英語の誘導型一酸化窒素合成酵素うんぬんが取り払われ、スッキリわかりやすくなっているのが、今回のこの研究。

英語を勉強したいガチ勢は日本語で書かれた要約を読んでから、実際の英語の元論文にあたると良い感じに理解できるかもしれません。

と言っても、正直、かなり難しいですが。

英語・日本語、両方の文献を以下に載せておきます。
↓元論文(論文のわかりやすい解説はブログを読み進めてください!)↓

★【世界を広げてみよう!】ド素人でも英語の論文を簡単に読める裏技★
このなぜ軽微な筋線維の損傷回復にアイシングが効果的なのかをサラッと説明すると、英語のほうの論文のタイトルにある誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、これに関係する細胞を抑えるため。

つまり、この長い名前の酵素が関係する細胞のせいで実は損傷が広がってしまうのですが、その細胞の集まりを抑えるため、回復には効果的であるのです。
もう少し詳しく見ていくと、この現象の大元にあるのが「マクロファージ」と呼ばれる体を外敵から守る超強い攻撃に特化した守備兵みたいな細胞です。
このマクロファージのがんばりのおかげで我々は風邪などの病気にそう簡単にかからない。このような病気にかからないでいようとする生物のもともと持っている機能を免疫機能と呼びます。
その一端を担うのが今回のマクロファージ。トレーニングによる回復にも関係してくる細胞でもあります。
というのも、先程のややこしい物質である誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)。

このよくわからない物質が仲介役を担うことでマクロファージが筋肉にダメージを与えるのです。
つまり、マラソンや激しい運動で筋肉に損傷が起こると、体のもともとの機能である免疫機能により、炎症に反応するマクロファージが損傷部位にワラワラと集まってくる。
そのときに誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)というものを介して「やる気を出した」マクロファージが余計に筋肉にダメージを与えるというのが、マニアックな生理学です。
★軽微な筋肉損傷にはアイシングがおすすめな根拠★
Icing after skeletal muscle injury with necrosis in a small fraction of myofibers limits inducible nitric oxide synthase-expressing macrophage invasion and facilitates muscle regeneration
『筋線維のごく一部の壊死を伴う骨格筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素‐発現マクロファージの拡大(浸潤)を制限し、筋肉の再成を促進する』
↓元論文↓
一般の方がとっつきやすいように、誘導型一酸化窒素合成酵素‐発現マクロファージについての説明はかなりザックリと意訳しました(怒らないでください汗)。このトピックの詳細が気になる方は論文中の真ん中あたりにある“Accumulation of iNOS-Expressing Macrophages and Whole iNOS Expression”の項をお読みください。
このような研究の話をすると「ネズミと人間は違う!再現性を示せ」という揚げ足をとりたくなる方もいると思いますが、このような積み重ねが「科学」だと僕は思っています。知識は相手の立場に立つため、人を気遣うための道具であり、研究を尊重した上での建設的な意見にこそ意味があります(マジで!)。
↓僕が考える知識の本当の使い方↓
【永久保存版】なぜスロージョギングで気分の落ち込み・うつ症状が治るのか?【ランニングでうつ病を治すスポーツ科学】
そんななんちゃら酵素にやる気を見せるマクロファージたち。
この研究で明らかになったのが、アイシングを行うとこのワラワラと集まってくるマクロファージたちの足が遅くなる。つまり、集まりが悪くなるという事実です。
ということから、マラソンや激しい運動での小さな筋線維の損傷では、あえてアイシングを行うことで細胞に余計ダメージを与える謎の酵素でやる気を見せるマクロファージたちの集合を弱めることから、筋肉の回復を良い具合で行える。
ちなみに日本語のプレスリリースには記述がなかったのですが、筋トレで筋肉が太く大きくなるそのメカニズムの一端を担っている主役のひとり。それが筋肉の周りにいる「筋サテライト細胞」。この筋肉を再生させる「主役」の細胞がアイシングのあとにすぐに集まることでも回復を促していたりもしています。
↓筋サテライト細胞についても言及されているおすすめ書籍↓
筋肉が太く大きなる生理学はp41~42を参照(←専門的視点でもありますが、個人的にはわかりやすい!)

というのが、先程のめちゃくちゃ長いこの英語のタイトル。
筋線維のごく一部の壊死を伴う骨格筋損傷後のアイシングは誘導型一酸化窒素合成酵素発現マクロファージの拡大(浸潤)を制限し、筋肉の再成を促進する
のざっくりとした中身です。
もう一度おさらいすると、マラソンや激しいトレーニング後のアイシングは効果的である可能性がある。それはマクロファージと呼ばれる免疫細胞の集合を弱めるから。言葉を換えると集まりが悪くなるため。なぜなら、このマクロファージという本来は体の健康を守る細胞の持っている負の側面としてこんなものがあるから。
炎症に関わるマクロファージは筋肉の損傷を広げてしまう
その理由がマクロファージが関係する長い専門用語である誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)にある。この長い物質によってやる気を引き出されたマクロファージが筋線維にダメージを入れてしまう。
そもそも損傷した部位にこのマクロファージが集まってこなければ、細胞に余計なダメージが入らないため、筋肉の回復を促せる。また、筋肉の再生の主役と目されるサテライト細胞、衛生細胞と呼ばれる細胞の集まりが早くなることでも筋肉の再生が促進される。
よって、軽い筋肉のダメージではアイシングが効果的である可能性が高いということが実際のネズミを使った動物実験で再現されたのです。
★【神戸大学】軽微な筋損傷に対するアイシングは筋損傷後の再生を促進する★
↓日本語プレスリリース↓

※マラソンについての言及もあり※
そして、これを聞いてこう思う方もいると思います。
そう、ここにもうひとつの鍵があります。
【アイシング研究②】アイシングは肉離れなどの筋損傷後の再生を遅らせる
それが2021年にジャーナル・オブ・アプライド・フィジオロジーという学術誌に発表された同じ研究者たちのこのような研究。
この研究で明らかになったのが、超興味深いもので、タイトルから明白。
英語のタイトルは専門用語が多く再びクエッションマークが飛び交うものなので、日本語のプレスリリースから引用すると、
アイシングは肉離れなどの筋損傷後の再生を遅らせる
そう、この研究はアイシングが筋肉の回復にネガティブに働くことを明らかにした研究なのです。
この研究が実は冒頭のマラソンや高強度トレーニングによるアイシングに繋がるひとつのきっかけになっており、この筋肉の回復を遅らせるプロセスも同じくマクロファージで説明できるのです。
★重症な筋損傷ではアイシングがおすすめされない根拠★
Icing after eccentric contraction-induced muscle damage perturbs the disappearance of necrotic muscle fibers and phenotypic dynamics of macrophages in mice
↓元論文↓
あのニューヨークタイムズ紙にも掲載されたトレーニング界隈では結構、メジャーな研究。個人的には以下のプレスリリースにある荒川高光准教授のコメントはとても示唆深くおすすめ!
↓【日本語プレスリリース】アイシングは肉離れなどの筋損傷後の再生を遅らせる↓

この研究をザックリと要約すると、タイトルから結論が分かる通り、アイシングは肉離れなどの筋損傷後の再生を遅らせる。ちなみにこの筋肉の損傷は、少しマニアックになるのですが、遠心性収縮という筋肉が引き伸ばされながら収縮する様式によっておこるもの。代表的なものがふとももにあるハムストリングスの肉離れなどです。ここを詳しく知りたい方は筑波大学の研究者が書いたこちらのアスリートのための解剖学の本がおすすめです。
>>アスリートのための解剖学 トレーニングの効果を最大化する身体の科学
p29、p172~p184にハムストリングス肉離れのメカニズム(機序)がかなり詳細に載っており、超おすすめです!これぞ「ザ・遠心性収縮の宿命」!

そう、肉離れのようなかなり重度な筋肉のダメージが起きたときにアイシングを行うと、なんと先程も登場した炎症を引き起こすマクロファージの到着が遅れ、結果的に治癒プロセスが進まず、回復に時間がかかる。

これがこの論文で指摘されている研究結果。
この研究を行った神戸大学大学院の荒川高光博士のコメントを読んでから、冒頭の研究に進むと理解が一段と深まります。
アイシングの極意
そうなのです。このふたつの研究から何が言えるのか?というと、アイシングはその重症度がひとつのカギとなる。
実際の博士たちの言葉を借りると
アイシングは、実施方法やタイミングの問題よりも、そもそもの傷害程度によって得られる効能が違う可能性が示された
つまり、肉離れのような重症度の高い筋肉損傷の場合はアイシングは実はあまり最適ではない可能性があり、逆に重症度がそこまで高くない、たとえばマラソン後や高強度トレーニング後などの軽微な筋肉のダメージにはアイシングが効果的かもしれないということ。
これが博士たちが明らかにした超面白い知見です。
ちなみにこのアイシングの線引きもまだはっきりしたものではないため、こういう知見もあると知っていればより効率的な回復に繋げられるかもしれません。
より詳しく知りたい方は、是非、日本語で書かれたこの2本のプレスリリースをお読みください。かなり分かりやすく書かれているので、おすすめです。
↓【日本語プレスリリース】アイシングは肉離れなどの筋損傷後の再生を遅らせる↓

↓【日本語プレスリリース】軽微な筋損傷に対するアイシングは筋損傷後の再生を促進する↓

【クーリング研究】どのくらいクールなんだ?運動のキャパシティとパフォーマンスに関するメンソール入りのマウスウォッシュの効果
では、最後に「クーリング」という切り口から、おそらく専門家も知らないであろうかなり面白い研究をひとつ紹介してからこの話を終えたいと思います。
個人的にタイトルが面白く、その名も
どのくらいクールなんだ?運動のキャパシティとパフォーマンスに関するメンソール入りのマウスウォッシュの効果:システマティックレビューとメタ分析
↓元論文↓

涼しさというとやはりこれ。メンソール。スッとして気持ちが良い。
このメンソールが入った口をゆすぐマウスウォッシュ。この口内洗浄が運動のキャパとパフォーマンスにどのくらい影響を与えるのか?というとても面白い切り口。
この面白い切り口が僕がこの研究をピックアップした大きな理由。しかも、システマティックレビューとメタ分析という謎に信頼性が高い研究手法でその効果に迫っているのもおすすめポイントのひとつ。
では早速、結論です。
果たしてメンソールが入ったマウスウォッシュを使うと運動のキャパとパフォーマンスがアップするのか?
答えはこう。
全般的な運動のキャパやパフォーマンスの大幅な改善はされない。が、しかし、持久系の運動をしている人においては、有益であるかもしれない。
そう、なんと持久系競技をしている人にとってはまさかのメンソール入りのマウスウォッシュ、口ゆすぎは能力アップに一役買う可能性が示唆されたのです。
というとても面白い謎の知見が得られるのが、この研究の面白いところ。
こちらの動画でも解説したように、持久系アスリートにとって、糖質の入ったドリンクで口をゆすぐとパフォーマンスがアップするというのは結構有名な話ですが、メンソール入りのマウスウォッシュでもまさかの効果があるようです。実際に現場で活用できるかどうかは置いといて。

ということで、以上3つの研究をご紹介しました。特に神戸大学大学院の荒川高光博士たちの研究チームが行ったアイシングの研究はかなり示唆に富む内容なので、指導者やコーチ、選手自身も是非、実際の一次資料をチェックしてみてください。おすすめです。
★糖質ドリンク口ゆすぎの知見が載っているスポーツ科学の名著★
>>世界最高のサイクリストたちのロードバイクトレーニング ツール・ド・フランスの科学

>>限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力(エンデュアランス)の科学
【筋膜リリース】パナソニック レッグリフレでマラソンが速くなる!
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