みなさんどうも、こんにちは!
僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。
スポーツの種目に限らず最も有名であり、尚且つ誰でも行っているある行為。
もし本格的にトレーニングしている人ならば絶対に一度はやったことがある。
それがアイシング。冷やすという行為。
実は以前、スポーツをするお子さんをお持ちの親御さんからアイシングの質問を頂いたので、本日はこの常識中の常識。リカバリーの当たり前に鋭いメスを入れたいと思います。
このブログを最後まで見れば、スポーツ指導員やパーソナルトレーナーも誤解しているアイシングの真実と「常識を疑う」という物事を考える際の本質が垣間見れる。是非、役に立つこと間違いない常識をぶち壊すスポーツ科学の世界を最後まで堪能してみてください。
目次
【前提】効率の良いトレーニングを考える前に
まず、この話をする前に共有しておきたい前提が存在します。
それがスポーツ科学や科学というそのものの曖昧性です。科学というのは知ることと知らないことの線引き作業です。この線引きは人間が行っているため、ミスが生じます。
↓たとえば、こちら「呼吸の科学」でご紹介した呼吸制限トレーニングの歴史↓
【持久力アップ】BREATH 呼吸の科学【足が速くなるトレーニング方法】
研究者や専門家によって否定されていたことが、実は測定方法が間違っていたため、現在では効果がある。つまり肯定されている。
このような事象はスポーツに限らず、ほぼ全ての分野で起こっています。
つまり、何が言いたいかと言うと、今からお話する話も絶対的な解ではないということです。全ての常識やその常識を否定して新たに打ち立てられる新常識と呼ばれるものも本当のところそれが究極的に正しいか間違っているのかわからない。
この曖昧さを追及していく行為そのものが科学の本質であり面白さです。
何がそんなに面白いのか理解できない人はこちらの本。ホーキンスの再来と呼ばれた天才物理学者が書いた、世界は「関係」でできている:美しくも過激な量子論をおすすめします。
数字が苦手な人、文系の人でも思わず引き込まれるくらいおもしろく、僕が去年読んだ本の中でベストスリーに入る読んで損はない「超」がつくほどおすすめの本です。
ラインナップ40万冊以上
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【スポーツ指導者必見】トレーニング後のケアにおけるアイシング(RICE処置)の歴史
では、これとは別に、ここにある1冊の本※この画像はあくまで参考画像です※。この本はスポーツ界の権威であるガブ・ミアーキン医師が1978年に出版したその名も『ザ・スポーツメディシン・ブック』です。
この本にスポーツで怪我をしたときの応急処置の原則を表す略語「RICE(ライス)」という言葉が登場します。
Rest、Icing、Compression、Elavation、日本語では安静、冷却、圧迫、挙上、これらの言葉の頭文字を取ってRICE処置と呼ばれます。
実際にアイシングを含めケガの際の応急処置RICEの概念とその言葉自体の歴史は古く、1906年から医学雑誌には登場していたようです。
そして、この本、GOOD TO GO 最新科学が解き明かすリカバリーの真実では、アイシングが世に広まった理由のひとつに、先程の『ザ・スポーツメディシン・ブック』の著者であるミアーキン医師が25年間にわたって様々なメディアで何度も触れたために、スポーツ医学の世界、はたまた一般に浸透するきっかけになったと指摘されています。
【本当に効果あるの?】プロテイン、水分補給、サプリメント、アイシング、ストレッチ
そして、驚くべきはそんなアイシングを世に広めた、ある意味アイシングの生みの親と言っても良いミアーキン医師自身がなんとこのアイシングを批判するようになったという事実です。
ミアーキン医師はこう言っています。
アイシングが一時的に患部の痛みを軽減するのは間違いないが、そこには代償もある
では、その代償とは一体、何なのか?
それがこれです。
アイシングという行為が炎症性サイトカインをブロックする
簡単に言うと、治癒プロセスの遅れです。つまり、アイシングをすることで、本来なら早く治るであろうケガの治りが遅くなってしまうという衝撃の研究結果が多数報告されるようになったのです。
オーストラリア国立スポーツ研究所(AIS)のリカバリー部門の責任者を務める運動生理学者ショーナ・ハルソン博士もこう指摘します。
現時点のエビデンスは、アイシングやアイスバスは筋力トレーニング後のリカバリー手法としてはあまり好ましくないことを示しています。超回復による身体の強化を目的とするトレーニングにとっても、最善のアプローチではありません。
アイシングを世に広めたとされるミアーキン医師はちゃんとしたドクターです。だからこそ、彼の意見は複数の研究によって導かれた新たな「発見」が根拠となり、アイシングを年十年も絶賛していた立場から正反対の批判する立場へと、いわば正しいと思われる方向へ意見を変えたのです。
炎症を抑え、リカバリーを促すとされていたアイシングが長期的な視点に立てば、なんと治癒プロセスを妨害していた。
これがアイシングをおすすめしない理由です。
【トレーニング新常識】ランニングやトレーニング後のリカバリー・ケアのやり方
そして、あとひとり、このアイシングに立ち向かう一人の専門家がいます。
彼の名はゲイリー・ラインル。2016年にホワイトハウスの医療部門への貢献で表彰され、プロゴルフ、テニス、NFL、MLB、NBAチームなどの顧問もつとめたそんな彼は「アイシングはスポーツ傷害や筋肉疲労に効果はない」というトピックの本、その名も『Iced!』の著者でもあります。
彼はこう言っています。
みんな、私に会うまではアイシングをしていた。”なぜアイシングをするのか?”と尋ねると、”炎症を防ぐため”という答えが返ってくる。だが炎症を防いだり抑えたりする必要などない。炎症が起こらなければ治癒もない。炎症こそが、身体が患部を治そうとする作用なのに!
さらにこうも鋭い指摘をしています。
アイシングでは何も妨げない。それは治癒を遅らせているだけなのだ。
近年の研究は、アイシングはリカバリーを促すのではなく妨げる、というラインルの説を裏付けています。
2006年の研究では、被験者に両手両脚を使うトレーニング、エアロバイクとハンドグリップの運動をさせた後、片方の腕と脚をアイスバスで冷やす、というトレーニングを4~6週間続けてもらいました。すると、アイシングをした手足のほうがパフォーマンスの伸びが低いことが判明しています。
また2013年の研究では、腕の曲げ伸ばし運動をした後で筋肉に15分間コールドバッグを当てた被験者群のほうが疲労度が高く、リカバリーも遅れていることが報告されたり、2015年の実験2件を対象にした研究も、筋力トレーニング後に筋肉を冷水に浸すと筋肉量の増加量が少なくなり、骨格筋での重要なタンパク質の活性化も鈍ると報告されています。
こうした研究の影響もあり、ラインルが謳うアンチ・アイシングはスポーツ界の重要人物から注目されるようになり、著名なアメリカの理学療法士ケリー・スターレットもインタビューでこう答えるまでに至っています。
アイシングはやめるべきだ。これまでの考え方は間違っていた。
おそらくこれらの話を聞いてもにわかに信じられないと思いますし、信じたくない気持ちもわかります。
だからこそ、この本ではこのように表現されています。
聖域に踏み込む勇気を持つべきだという意味で「聖なる牛を殺す準備は出来ているか?“Ready to slay a sacred cow?”」
【スポーツの研究者が教える】トレーニングにおけるアイシングのメリット
さて、ここまで散々、アイシングは良くないと言ってきましたが、さきほどのオーストラリア国立スポーツ研究所の生理学者ショーナ・ハルソン博士はアイシングのメリットについても、実はこう指摘しています。
メリットが得られると考えられるのは、ごく短期的なリカバリーが必要で、長期的な適応を気にしなくていい状況です。たとえば予選と決勝の間など。また、アスリートが強い疲労感を覚えているときにも冷却療法・アイシングにはメリットがあると考えられます。
ただし、
ハードなトレーニングで最大の効果を得たいのなら、氷を使うのは避けたほうがいい。
とも付け加えています。
ハルソン博士が言うには、アイシングには二つの競合する理論があり、一つ目は、さきほどの”炎症は抑えるがトレーニングへの適応が阻害される”。もう一つは、”痛みや筋肉痛が緩和されるので、短時間のインターバルで再びハードなトレーニングができる”です。
ハルソン博士はこの二つは状況によってどちらも正しいと見なせると指摘します。
一体どういうことなのか?
アイシングを含めリカバリーで最も重要なこと。
それは適応です。つまり、そのリカバリーのゴールはどこにあるのか?どのような場面を見越したリカバリー、適応であるのか?ということです。
言葉を換えると、本番のレースに向けてカラダを作っている途中であれば、長期的なメリットを優先する。しかし、連戦しないといけない大切なレースや選抜に関わる重要なトレーニング前などは短期的に得られるパフォーマンスアップを優先するということです。
基礎的なカラダを強くするためのトレーニングではアイシングをやめ、炎症作用によってカラダの回復を促す。反対に予選や決勝など「ここぞ!」という勝負の前は短期的なパフォーマンスをあげるために、アイシングを行う。
このようにリカバリーも、トレーニングと同じく、「ピリオダイゼーション(期分け)」のアプローチをとるべきだということ。これが回復のスペシャリストであるハルソン博士がリカバリー研究の最前線で明らかになった事実から導いた最適解、リカバリーの考え方です。
何のためのリカバリーなのか?その目的に合わせてリカバリー手法を柔軟に変えていく。とても大切な考え方です。
【具体例】トレーニング後にアイシングを使う状況とそうではない状況
おさらいになりますが、トレーニングでの回復には「炎症」というプロセスが必要不可欠です。アイシングとはこの炎症作用を遅らせる行為に他なりません。よって、アイシングを行うと、体の回復スピードが遅くなり、結果、良いトレーニング成果、つまりトレーニングでの適応が遅くなり、最悪、ケガの頻発に繋がるという理屈です。
だからこそ、トレーニングによってカラダを作る時期はアイシングは極力避け、代わりにジョギングなどのクールダウンを長めにとるのが最善かと思われます。しかし、一方で本番のレースや大会が近づき、長期的な視点が不要になった場合は、適宜、アイシングを行うことで、短期的なパフォーマンスアップに注力します。
連戦する場合や予選、決勝の間などは、積極的にアイシングを取り入れることで一時的なパフォーマンスアップが期待できます。
そのときにキーワードとなるのがアクティブ・プラセボ効果、またはアクティブ・プラシーボ効果です。
【マラソンに効く】プラセボ効果・プラシーボ効果【最高の鉄剤】
人は治療が痛みを伴うものだと、”痛いのは効いている証拠だ”
と思います。このような思い込みが起こす効果を専門用語で「アクティブ・プラシーボ効果」と呼びます。
実際にダイレクトに温痛覚に刺激を与えられるアイシングこそ、このアクティブプラシーボ効果の真骨頂。
【スポーツ指導者や親御さんに知ってほしい】トレーニング後のケア・回復に関する考え方
だからこそ、冒頭での質問でもあったスポーツをしている子どもさんにいきなり「アイシングはやめろ!」というのは逆効果を引き起こす可能性があります。
なぜか?
本人が信じているし、周りの仲間もアイシングをやっているからです。
よっていきなりアイシングをやめるさせるのではなく、アイシングを長めのクールダウンに徐々に置き換えていき、本人がもし効くと信じているのなら、積極的に使うのもありだと個人的には思います。
治癒のプロセスが遅くなるとしても、その遅さは人それぞれ、つまり回復力は人それぞれです。
よって、本人が信じるアクティブ・プラシーボ効果のほうが結果的に回復力に直結することもあります。
だからこそ、研究を鵜呑みにしていきなりアイシングを全てやめるのではなく、本人が信じれられるのなら、頻度を減らしつつ有効活用するのがベストだと思われます。そして、ある程度の年齢になれば、「なぜダメなのか?」を論理的に説明して、納得してもらってください。
どうでしょうか?たかがアイシングでも実はここまで奥深く興味深いものなのです。
さいごに
今話したことも、もしかすると何年か経つと実は間違っていたという可能性も十分にあります。そのことを頭の片隅に入れた上で、現時点でわかっている事実と向き合っていきましょう。
それこそ、真の意味での科学的根拠と呼ぶものだと僕は思います。
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