みなさんどうも、こんにちは!
僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。
従来の持久系トレーニング理論に激震をもたらせたトレーニング方法。
その名もノルウェーモデル・ノルウェーメソッド。
陸上中・長距離界で最速と謳われるノルウェーの新星、ヤコブ・インゲブリクセン選手をはじめメダリストが取り入れている新しいトレーニング方法。
この次世代のトレーニング手法を徹底解説した動画を作っているときに様々な資料を読んだのですが、その時にかなり面白い論文を見つけたので、今回はおそらく研究者や大学教授でも知らないかもしれないマニアックでいてとても示唆深い「超」がつく面白い研究をみなさんにご紹介したいと思います。
このブログを最後まで見ると、おそらく日本人でも知っている人はいないと思われる興味深い知見から改めて持久系トレーニングの核心に迫れる。
少なくとも僕は今からご紹介する研究で、いろいろと考えさせられたので、僕がなぜ、どのように考えさせられたのかのプロセスを共有しながら、面白くも複雑な持久系トレーニングの深みとそこから読み取れる壮大な学びを追体験していただければ、このブログの価値はあるのかなと思います。
では、早速専門家も知らないであろうマニアックな知見を見ていきましょう。
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目次
【2つの視点】持久系アスリートのためのポラライズドトレーニング
ここにある持久系アスリートのための2本の論文。
僕がいろいろと論文を読んできたものの中でもかなり面白い論文。
それは一体、なぜか?
まずタイトルをご覧ください。
一つ目、ポラライズドトレーニング イズ オプティマル フォー エンデュランス アスリーツ『Polarized Training Is Optimal for Endurance Athletes』
そして二つ目、ポラライズドトレーニング イズ ノット オプティマル フォー エンデュランス アスリーツ『Polarized Training Is Not Optimal for Endurance Athletes』
ほとんど一緒。がひとつだけ違う単語が入っている。それが否定を表すNotという英単語。
一つ目が日本語で、「ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適である」と題された論文。
そして二つ目の論文が、Notが入った、その名も「ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適ではない」というタイトルの論文です。
数々存在する論文の中でもとても面白い対、コンビをなすのがこの2本の研究たち。
ここで「おっ!」となった方は鋭い。
なんとこの論文の片方。
否定のNotが入った研究『ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適ではない』はそれこそノルウェー式トレーニングを完全解説したブログ・動画の最後にぶち込んだものでもあるのです。
この動画の尺が長く、おそらくほとんどの方が途中で離脱している可能性があるため、ここであえてざっと振り返ると
ノルウェー式トレーニングこそ至高。トレーニング理論には正解があるのだ!
という論説をぶち壊すためにあえてこのポラライズドトレーニングを否定する論文を打ち出し、ノルウェー式トレーニングは果たして本当に効果的なのか?という鋭い切り込みを入れたのです。
ついでに、従来の教育システムのある種の欠陥、どこかに明快な答えが必ずあるはずという専門家でも陥るような陥穽(かんせい)、落とし穴にも果敢に切り込んだりもしています。
また、実は冒頭の話の伏線回収としても機能しているので、冒頭5分程度の知見を最後のチャプター『【これぞ科学!】専門家も語らないトレーニングの本質とノルウェー式トレーニングの面白さ』で再度、回収していたりします。
気になる方は ノルウェー式トレーニングは車輪の再発明!? のチャプターを最後まで見てから、先程の「これぞ科学!~」のチャプターに飛んでみてください。
ポラライズドトレーニングをベースとした最新の科学的トレーニング手法を徹底的に解説した動画。冒頭5分程度見てから、概要欄にある目次『【これぞ科学!】専門家も語らないトレーニングの本質とノルウェー式トレーニングの面白さ』に飛べばおそらく「そういうことか!」と納得できるはず!?
というノルウェー式トレーニングと呼ばれる軽い練習ときつい練習をガッツリ二極化させたトレーニング方法。それがこちらの2本の論文。研究のタイトルにあるポラライズドトレーニングの意味するところ。
めちゃくちゃマニアックなことを言うとこの聞き慣れない「ポラライズド(Polarized)」という英単語はみなさんも使っているかもしれないあのGPS時計メーカーのポラール(Polar)。このポラールという英単語の元々の意味が「極性」や「極地」という意味であり、これはすなわち北極や南極のこと。
北極と南極のように正反対を意味する言葉がこの極性や極地という言葉であり、ポラール(Polar)から派生したのがこのポラライズ(ド)という言葉だったりします。よって、両極端のトレーニング。軽いトレーニングときついトレーニングを組み合わせているという両極端な関係のトレーニングだからこそ、ポラライズドトレーニングと呼ばれています。
もともとワイヤレス心拍計で有名な企業であり、アスリートが腕に付けている心拍計が実はポラール社だったりします。ちなみに本場の発音はポラールではなく「ポーラー」が正しい(はず)!?
という感じで、だいたいの雰囲気が伝われば幸いです。気になる方は詳しいノルウェー式トレーニングの中身を見れば「なるほど!」と納得できるかと思います。
この二極化トレーニングであるポラライズドトレーニングが持久系アスリートにとってどうなのかを深ぼったのが、この2本の研究です。
そして結果は
タイトルから明白で一方は最適である!もう一方は最適ではない!というこれぞポラライズド!
まさに北極と南極のような主張を二極化させている最高の論文がこの2本の論文。おそらく著者たちはこれをあえて意図してこのタイトルにしたという高度なユーモアを体現しているという意味で「超」がつく面白い研究なのです。
文章だけを正確に訳すだけでは伝わらないコンテキスト、前後の文脈に隠されたユーモアが個人的にはこの2本の研究に通底するキモだと考えており、このキモを的確に押さえた上でそれぞれの主張をいかに考えられるのか?という意味で研究者や大学教授も知らないと僕は冒頭で絶妙な煽りをあえて入れたのです。
この発言でムッとした方は是非、最後までご覧ください。この言葉の意味する本当のところが理解できると思います。
という文脈を押さえた上で実際の論文をサクッと解説します。より詳しい内容が知りたい方は概要欄に元論文2本とその読み方も載せているので、各自深ぼってみてください。
ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適である
ではまず最初の論文。
「ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適である」と題された論文を見ていきましょう。
この論文の主張はそのままで、ポラライズドトレーニング、二極化トレーニングと呼ばれる運動強度の低い低負荷トレーニングと運動強度の高い高負荷トレーニングの二軸で行う練習方法が持久系アスリートにとってベストであるというもの。
特になぜベストなのか?を論理的に示すのがインターベンションスタディズ(Intervention studies)、介入研究という項目。
ここに面白い事実が載っており、そこでは5つの十分にコントロールされた信頼性が高いであろう研究結果からこう示唆されているのです。
ランダムにポラライズドトレーニング(二極化トレーニング)か閾値トレーニングかに割り振られた被験者において6~12週間のトレーニング介入期間後のパフォーマンスをベースとした測定値の変化率は45%を上回った
これはつまり、5つの信頼性が高い比較研究では、ポラライズドトレーニングの方が閾値トレーニングよりもパフォーマンスや生理学的指標の改善度が約45%高かったということ。
より厳密に言えば、4.2% と 2.9%。
ポラライズドトレーニングでの測定数値は4.2%向上、閾値トレーニングでの測定数値は2.9%向上。
この結果から、ポラライズドトレーニングの方が効果的であると示唆されているのです。
また、この論文中のCausal hypotheses(一般的仮説)やSummary(要約)にも書かれていますが、高強度トレーニングの弊害として、自律神経系へのダメージなど体だけではないオーバートレーニングについての言及も結構示唆深いです。
もし専門家や指導者であれば、Causal hypothesesの最後に出されているエステべ ラナオ(Esteve-Lanao)博士らのランナーを対象とした研究は興味深く、合計心拍数で表すゾーン3、一般的なダニエルズ式トレーニングのような5つのトレーニングゾーン分類ではなく、ここではノルウェー式トレーニングと同じ、high intensityと呼ばれる超しんどいトレーニング強度。それがゾーン3。
ランナーはこの一般的な高強度トレーニングに耐えれて10%まで
おそらくこれはトレーニングボリューム、トレーニングの量のことだと思われるため、ゾーン3での許容量の限界値が10%くらいと考えると本気で走るランナーが質と量を追い求め過ぎてガッツリトレーニングしまくると、いろいろと弊害が出て来るのも結構、納得です。
IMPACT OF TRAINING INTENSITY DISTRIBUTION ON PERFORMANCE IN ENDURANCE ATHLETES
↓元論文↓
要旨(Abstract)には元論文「ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適である」で指摘されている「ボリューム限界」のような記載はないですが、低強度ゾーンでのトレーニングの利点をプッシュするメジャーな研究のよう(被引用数444:Google Scalar調べ)。ノルウェー式トレーニングもおそらくこの研究をベースにして作られている印象を受けました。
ということもふくめて、低強度トレーニングの利点、ゆっくり長く走るプラスインターバルトレーニングを組み合わせた二極化トレーニングの利点を数値ベースで改めて明らかにしたのがこの論文。また、ノルウェー式トレーニングでも出したAMPKなどの運動生理学的、細胞生物学的視点でもなぜ良いのかが載っているので、気になる方はお読みください。
【肯定】ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適である
Polarized Training Is Optimal for Endurance Athletes
↓元論文↓
対照的な視点(CONTRASTING PERSPECTIVES)から見るポラライズドトレーニングを「肯定」する論文。トレーニングの歴史の流れを知れたり、実際のおすすめ研究を知れたりするので普通に学びになる論文。
ちなみにこの論文は2022年に発表された比較的新しい論文でもあります。
ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適ではない
そして同じ号のメディシンアンドサイエンスインスポーツアンドエクササイズ誌の次のページに連番として載っているのが、こちらの論文。
ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適ではない
最初の論文にNotが入っただけの、対をなす面白い論文。
数値ベースでポラライズドトレーニングを肯定した論文を真っ向から否定するという、ユーモア溢れる最高の組み合わせ。
では、この論文の中身を見ていきましょう。
個人的に大好きなのが、一番最後にあるCONCLUSIONS、結論の最後の締めの文章。これがまさしく結論。
日本語に訳すとこうです。
ポラライズドトレーニング(二極化トレーニング)は当初は誤って伝わっていた。
そして今でも誤解され続けている。
その実践、もしくは練習方法にこだわることはほとんどの場合、ガイドをミスる、つまり見当違いである。
何が言いたいのかというと、持久系アスリートに最適であると示唆されたポラライズドトレーニングとよばれる低強度と高強度を組み合わせた従来のトレーニング方法は誤解され続け、その方法論だけにこだわり続けるのは見当違いである。ミスガイドされる。望んでいない場所に誤ってガイドされるかもしれないということ。
また、気になる方は是非、概要欄にある実際の論文を読んで欲しいのですが、there are no studies~という書き方でポラライズドトレーニングの有用性を証明する研究は存在しないとも指摘されています。
と聞いて
さっき、45%という数値を出してポラライズドトレーニングの方が効果的であると言っていたのになぜだ?
と思う方は以下のブログ・動画でエビデンスレベルの話を知れば、ある意味納得してもらえるかもしれません。概要欄に該当する目次とともに補足しておきます。
やり手スポーツ科学者の発言から「真の科学的根拠とは何か?」が知れる。
おそらく、実験参加者の総数が少なかったりしているため、その実験の確固たる再現性に疑問が残っているというのもひとつの事実かもしれません。
10人だけ調べるのと100人を調べるのだとその研究の信頼性に違いが出て来るのは明らかです。
ちなみにポラライズドトレーニングでの信頼性が高いとされる1研究の被験者の総数は、10~15人前後とだけ補足しておきます。
という深読みプラス、研究の闇に触れるのはやめて、一応、実際にポラライズドトレーニングの有用性は証明されていないと一部の研究者は言っているという事実は押さえておきましょう。
そして、僕の解釈の限りではこの研究はタイトルから結構誤解されやすいのですが、その内実はポラライズドトレーニング自体を批判しているのではなく、ひとつのトレーニング方法にこだわるのは良くないと言っているのだと僕は思っています。
つまり、多様なゾーンでのトレーニングプログラムが大切。その意味であえてゾーン1とゾーン3、軽いトレーニングときついトレーニングの二極化トレーニングを否定するかたちで真ん中の中強度ゾーンであるゾーン2、閾値トレーニングの重要性を打ち出したかたちになっていると思われます。
この前後の文脈を理解せずに断片的に情報を切り取ると、
ポラライズドトレーニングは最高!
ポラライズドトレーニングは微妙!
など一義的に解釈し、それこそミスガイドされる。誤った場所にガイドされるかもしれないのです。
つまり、何が伝えたいのかというと、
トレーニングに最適解はない!
言葉を換えると
全てが正解である!
という当たり前の事実だと僕はこの二本の対となる論文を読んで、思いました。
【考察】持久系トレーニングはファッションと似ている!?
よって、僕がノルウェー式トレーニングでこの論文の学びを最後に持ってきたことも、理解できると思います。あの動画の前半で指摘したのですが、トレーニングの流行、流行り廃りが存在するという事実は裏を返せば、そこに答えはない!ということ。
よく考えてみてください。流行と言えば、ファッション。
そんなファッションに答え、誰にでも共通する確固たるひとつの最適解なんて存在するでしょうか?
ないからからこそ、流行が存在し、流行が移り変わるのです。
僕はおそらくこのことがトレーニング理論や方法論にも当てはまると考えています。なぜなら、この二本の論文。
「ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適である」と題された論文。
そしてもう一方が 「ポラライズドトレーニングは持久系アスリートにとって最適ではない」という論文。
このふたつが示唆していることこそ、トレーニングに○×のような完全な答えなんて存在しない! というとても含蓄のある学びだと僕は解釈しているからです。
現在は様々な情報が恣意的に切り取られ氾濫し、それを鵜呑みにして誤った、論文の言葉を借りればミスガイドされている人もちらほらいるように思います。
この2本の論文も恣意的に切り取ればいかようにも使えるという事実。最適なトレーニングがあるようにも、ないようにも主張できる。
自分が知り得る一部の限られた情報のみで全体像を作り上げ、盲信してしまうという太古から現在に至るまで良く起こってしまう現象の危険性をも示唆するという意味で今回、この二本の超面白い論文を紹介してみました。
が、実際のこの二本の論文は運動生理学的視点やトレーニングを知るという意味でかなり上手くまとまっている印象があるので、普通に学びになりおすすめです。
もちろん全て、コメント付きで載せているので、気になる方は各自深ぼってみてください。
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