【エンドルフィンだけじゃない】ランナーズハイの仕組み

書籍紹介

みなさんどうも、こんにちは!

僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。

 

2021年世界大学ランキング第2位。スポーツ分野でもオリンピック選手を輩出するなどの文武両道を誇る名門大学

それがスタンフォード大学

今回紹介するのはそんな世界屈指の名門大学でストレスを研究する心理学者であり、世界的な経済誌「フォーブス」で人々をもっとも啓発する女性20人にも選ばれた、ケリー・マクゴニガル博士の著書。

スタンフォード式人生を変える運動の科学

運動で人生を変えることが出来る

「そうなのか!」と眼からウロコが落ちる、「よし、やってみよう!」とすぐに体を動かしたくなるそんな運動の科学をご紹介します。

もしかするとあなたの人生が変わるかもしれません。是非、最後までお楽しみください。

なぜ運動すると人生が変わるのか?

答えは筋肉から希望が生まれるからです。

そう、なんと運動すると実際に筋肉から希望が溢れだすのです

どういうことでしょうか?

人間生物学の研究により、筋肉が収縮すると、運動誘発性マイオカインという物質が血中に放出されることで、「もうだめかもしれない」と諦めていた気持ちが前向きになるという驚きの事実が判明しました。

筋肉は体を動かす原動力だけではなく、なんと同時にホルモンを分泌する内分泌器官としても働いているのです。

筋肉が収縮したときに、分泌される魔法の物質。

それがマイオカイン

マイオカインを発見した科学者たちはこれを「希望の分子」と名付けるほど効果的に塞ぎこんだ気持ちを前向きにしてくれるのです。

マイオカインの代表的なものにイリシンというものがあります。別名「運動ホルモン」。トップアスリートたちの血液中のホルモンを分析したところ、イリシンの数値がきわめて高いことがわかりました。このイリシンは体脂肪を燃焼させる代謝機能で知られていますが、同時に天然の抗うつ剤としての効果もあります

つまり、イリシンの血中濃度が高いと運動能力が上がり、同時にモチベーションが高まり、学習能力が向上するのです

そしてなんとトレッドミルで一回走るだけで、血液中のイリシン濃度は35%も上昇することもわかりました。

さらに2018年の研究論文では、1時間のサイクリング中に大腿四頭筋から分泌されるマイオカインは、35種類もあることが確認されています。マイオカインは精神の安定だけにはとどまらずに、筋肉の増強に役立つものもあれば、血糖値調節や、炎症の緩和、がん細胞の破壊などの働きをすることもわかってきました。

よって研究者たちは現在、運動での心と体の健康増進は、筋収縮によって分泌されるこれらの有益なマイオカインの効果によるものと考えています。

だからこそ、運動はうつ病などのメンタルに効果的であり、文字通り筋肉から希望が生まれるのです

筋トレ書籍ではよくテストステロンやセロトニン、ドーパミンというホルモンや神経伝達物質がもてはやされていますが、実は筋肉から生み出される希望物質、運動誘発性マイオカインによるおかげが精神に良い影響を与えているかもしれません。

乳酸はうつ病を治す!?

また最新の研究ではこんな驚きの結果が得られました。

それは乳酸がメンタルヘルスに対する効果を示唆しているというものです。

どういうことか?

なんと運動の代謝副産物である乳酸は、体内の血管をめぐって脳にたどり着き、神経系に作用して不安を緩和したり、うつ病を予防したりする効果があることが分かったのです。

乳酸はエネルギーの材料として再利用されているだけでなく、なんとメンタルにも作用し気持ちをハッピーにしている。

これは誰も知らない現在の最先端の筋トレ知識のひとつです

結局「筋トレですべて解決する」という言葉はあながち間違いではないというのがわかってきました。

ランナーズハイの仕組み

運動にハマってしまう理由のひとつ。みなさんが一度は聞いたことがある言葉。

それがランナーズハイ

持続的な運動によって引き起こされる最もポジティブな感情。それはまるで体の奥底から溢れだす喜び、満足感、高揚感、多幸感であり、これはランニングだけでなく、ほとんどすべての持久系スポーツで体感出来ます。

ランナーズハイとはいったい何なのか?なぜランナーズハイが起こるのか?

アリゾナ大学の人類学者、デイヴィッド・ライクレン博士はランナーズハイについて考えました。

ランナーズハイとは長距離を走っているときに体に生じる偶然の副産物などではなく、持久力を発揮すると報酬が得られる仕組みになっているのではないか?
ランナーズハイとは人類の進化の過程において、快感をもたらす脳内化学物質の働きを利用し、持久性運動によって満足度を得られるようになったのではないか?

人類は獲物を狩らなければいけないために、長時間の運動を余儀なくされていました。そんな状態で心身ともの疲れを克服するために編み出した必殺技。

それがランナーズハイなのではないか??

ランナーズハイは運動を続けなければいけない人類にとって、狩りを続けるための、生き残るための生存戦略だったのではないか

ランナーズハイという言葉を聞くと、エンドルフィンという脳内の神経伝達物質が語られることが多いです。

しかし、最新の研究では、ランナーズハイは内因性カンナビノイドという脳内化学物質が影響を及ぼしていることがわかりました。

内因性カンナビノイドには、大麻やマリファナのように苦痛を緩和し、気分を向上させる作用があります。そして、この物質の特徴は持久系運動、持久力と関連していることです。

これは持久系の運動をしないイタチを使ったこんな実験で明らかになりました。

犬とイタチをトレッドミルで30分間のジョギングをさせます。すると犬たちの内因性カンナビノイドの血中濃度は上昇しましたたが、イタチの場合は、時速3キロで走ったにもかかわらず、上昇は見られませんでした。

以上から、ランナーズハイを引き起こすカギは、走る行為そのものではなく、中強度の運動を継続することにあること。

つまり持久系の運動の結果として内因性カンナビノイドは分泌されることがわかりました

継続した動きによって心拍数が上昇する運動なら、どんな運動であれ、がんばったごほうびがもらえる。そのご褒美こそ、体の奥底から溢れだす喜び、満足感、高揚感、多幸感であり、その原因が内因性カンナビノイドです。

実験の結果からランナーズハイはただ走ることではなく、持久力を発揮することで得られることがわかりました

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内因性カンナビノイドがランナーズハイを引き起こす

ケリーマクゴニガル先生は指摘します。

ストレス反応をつかさどる脳の領域には、内因性カンナビノイドの受容体が数多く存在します。
内因性カンナビノイドの分子が受容体と結合すると、不安が緩和され、充足感が得られます。さらに内因性カンナビノイドは報酬系であるドーパミンを増やすため、楽観的な気分になります

では、実際、どれくらいの時間、どれくらいのしんどさの運動をすればランナーズハイになるのでしょうか?
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ケリーマクゴナガル先生は言っています。

20分間、自分とってややきつい運動を続けてください。それでハッピーになります

実験によると30分のウォーキングをした場合、効果は現れませんでした。また全速力で走った場合も、効果は表れませんでした。

ところがジョギングの場合、内因性カンナビノイドの血中濃度は3倍も上昇し、参加者たちはハイな気分になったと報告しています

よってランナーズハイに至るには自分にとってややきつい運動(中強度~高強度の運動)を20分は続ける必要があると結論付けました。そしてこれを週3回、6週間以上継続することで脳は変化します

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ケリーマクゴナガル先生もこの事実を知ってから、このように言っています。

私は朝型ではないけれど、がんばってベッドから這い出し、ぼうっとしたままキッチンへ行ってコーヒーを飲み、まずは運動をするようになりました。これは私なりのサバイバル戦略です――エクササイズを終えたあとの、勇敢で、楽天的で、どんなことにも立ち向かえる自分になってから、1日を始めたいから

ランナーズハイの意味

そして、ランナーズハイを生み出す内因性カンナビノイドには、不安が和らぎ、明るい気分になるだけでなく、人とのつながりを感じやすくなる効果もあることがわかりました。

内因性カンナビノイドの血中濃度が高くなると、人と一緒にいることが楽しくなるだけでなく、交流の妨げとなる社交不安が緩和されるのです。

ランナーズハイは人とのつながりを促進する

共通の目的に向かって力を合わせることで、喜びや興奮を感じる。これは集団で狩りをしていた人類にとって、生き残り戦略として機能してきたことを意味します。

さらに体をよく動かす人ほど、感じる喜びは大きくなります。なぜなら、定期的な運動によって脳の構造は変化しますが、そのひとつとして内因性カンナビノイドの結合部位が増大するからです。

結合部位が増えると内因性カンナビノイドを活性化する快感に対して、脳がさらに敏感になるために、余計喜びを感じやすくなります。

運動すればするほど楽しくなるというランナーズハイも、これで説明がつきます

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さいご

ここに運動とメンタルに関するおもしろい事実があります。

人類学者でデューク大学教授のハーマン・ポンツァーらは研究プロジェクトの一環として、現在でも狩猟採集生活をしているアフリカ、タンザニアのハヅァ族の追跡調査を行いました。その結果、驚くべきことに彼らには二大現代病とも呼ぶべき不安症とうつ病がひとりも見られませんでした。

狩りという定期的な運動をする環境であれば、現代のメンタル疾患とは無縁だったのです。

だからこそこの現代を生き抜く戦略として運動はとても重要な役割となります。健康とは体と心両方について言えます。運動は体も心も健康にし、人生を前向きに捉える最も簡単でお金も掛からない最高の人類のDNAに根差した叡智なのです。

実際の世界的な統計データとしても、体をよく動かす人たちのほうが、幸福感や人生に対する満足度が高く、それはどんな運動をしている人にも当てはまりまることがわかっています。

まずは20分間、あなたにとってちょっとだけしんどい運動を週3回、6週間続けてみましょう!

運動によってあなたの人生が変わります。

今回はあくまで簡単にまとめただけなので、少しでも気になった方は本書をお取り下さい。

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