みなさんどうも、こんにちは!
僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。
2021年に開催された東京オリンピック、男子マラソン競技。
高い気温と高い湿度。まさに過酷なレースであり、106人中30人が途中棄権しました。
このレースで金メダルを獲得したエリウド・キプチョゲ選手は42.195kmを2時間8分38秒でゴール。
6位に入賞した大迫傑選手でも2時間10分41秒。
また、少し時をさかのぼって、2004年のアテネ・オリンピックの女子マラソン。
野口みずき選手が優勝し金メダルを獲得したときのタイムは2時間26分20秒。
そして、驚くべきはその時の気温です。なんと35度。
これらの選手に共通する点は灼熱の状況でも熱中症にならず、2時間以上にもわたり驚異的なハイパフォーマンスを発揮できたことです。
こんなことができる哺乳類はほかにはいない!
そう豪語するひとりの専門家。彼こそがハーバード大学のダニエル・リーバーマン博士です。
今回はそんな人間が持つ持久力の秘密を解き明かしながら、最も本質的で根源的な疑問。
なぜ人間だけが二本の脚で大地を駆けまわっているのか?
を論文ベースでスポーツの専門家が知らないであろう視点から紐解きたいと思います。
このブログを最後まで見れば、死ぬほど面白い人間とランニング、人間と持久走の秘密がわかる。是非、最後までご覧ください。
目次
ネイチャー誌の表紙を飾ったランニング・ジョギングと人類の秘密
ここに一本の論文があります。それがこれ、Endurance running and the evolution of Homo
日本語では、「持久走と人間の進化」と題されたなかなか衝撃的な論文です。
世界で最も権威のある学術誌のひとつ。それがNature。このネイチャー誌に掲載され、表紙を飾った論文こそ、何を隠そうこの論文。
僕が読んだランニングに関する論文の中でも、頭ひとつとびぬけておもしろい論文であり、ベストセラーになったBORN TO RUN走るために生まれたの元ネタとなった論文でもあるのです。
今からこの論文の何が面白いのか?
そしてこの論文の余白に書かれている死ぬほど面白い仮説を論文の著者である、ハーバード大学の進化生物学教授ダニエル・E・リーバーマン博士が書いたこの本、人体600万年史、科学が明かす進化・健康・疾病をもとに見ていきたいと思います。
まず下にあるハーバード大学のデータベースからこの論文をクリックひとつでダウンロードしてみてください。
https://scholar.harvard.edu/files/dlieberman/files/2004e.pdf
もちろん内容を理解する必要はありません。
8ページしかないのでざっと目を通して、是非とも世界屈指の学術誌に掲載された論文とはどんなもんなのか?という雰囲気だけでも味わってみてください。
さて、解説に入る前に前提だけ共有します。
この論文で書かれているのは事実ではなくあくまで仮説です。なぜなら事実・真実を知るために過去にタイムスリップなんて出来ないからです。
よって現在入手可能な化石、人間の親戚、チンパンジーなどの類人猿の研究、実際にいるアフリカの狩猟採集民族の記録などから集めた証拠によって仮説は組み立てられています。
そして、この論文の反響で生まれた指摘や新たな研究も折り込みながら、この論文プラスαでランニングの正体に迫まります。
そこのところを理解した上で、この論文のおもしろいところを見ていきましょう。
ランニング・ジョギング・持久走で人類は進化した!【おすすめの有酸素運動】
この論文の結論を端的に言うとこうです。
持久走は人類の遺伝に由来した能力であり、カラダを形づくる進化の助けになったかもしれない。これはつまり、人類の進化の鍵はもしかすると持久走にあるかもしれない
ということです。
なぜそんなことが言えるのでしょうか?
もっと言うと、人類は持久走・ランニング・ジョギングによって進化できた。
その理由としては、やはりこう。
この論文の中で提唱されているランニング、言葉を換えると狩りの形。ひとつが、「scavenge」という単語で表される動物の死骸を漁る、いわゆる腐った肉を漁る行為です。
人類にとって、この死骸漁りとは、ハイエナなどのサバンナの動物がするものではなく、死骸をいち早く見つけて安全な場所まで運ぶという意味合いも含まれています。
そして、もうひとつが、この論文の中での裏ボス的存在。ぶっ飛んだインパクトと合理性を兼ね備えている「持久狩猟」です。この論文の中の言葉を借りれば、
run some mammals to exhaustion in the heat(灼熱の中、獲物をヘロヘロになるまで走らせる)
この言葉です。
これらの狩りを可能にするための進化、ランニングの合理性が、エネルギー効率、骨格、安定性、体温調節、呼吸などの観点から、この論文の中ではかなり詳細に検討されています。
つまり、
という大胆な仮説です。
【人類史を俯瞰】なぜ有酸素運動にはランニング・ジョギングがおすすめなのか?
みなさんご存じの通り、人間は無力です。
なぜなら、人間には鋭い牙や爪、強靭な筋力がなく、すばしっこい動物を狩るほどの俊敏性も持ち合わせていないからです。
と、ここまで聞くと、こう思うはずです。
だからこそ人間には知恵があるんじゃないかと。頭を使ってうまく動物を狩っていたんじゃないかと?
実はそれは人類史から見れば、比較的最近の出来事です。
道具、つまりとがった槍などの狩りをするアイテムが登場したのが、約50万年前。弓矢が登場したのが約2万年前。しかし、二足歩行をする初期人類であるホモ・エレクトゥスが登場したのはなんと200万年前。
これはつまり、150万年もの間、初期人類はなんと素手だけで動物を狩っていたということです。
ちなみに彼ら、ホモ・エレクトゥスの運動能力や体型は現代の人間である私たちとさほど変わりません。
もちろんライオンなどの天敵もたくさんいます。
しかも、もっと言えば脳の大きさは私たちより小さい、つまりそこまで賢くないという状況の中で、です。
自然という残酷な弱肉強食の世界。そんな過酷な世界の中で、なぜここまで非力な初期人類が淘汰されず生き残れたのか?
その壮大な謎にいどんだのが、この論文の著者たちなのです。
では、その秘密。なぜ非力な人類が生き残れたのか?その究極的な生存戦略。道具が存在していなかった初期人類が編み出した究極奥義。
それこそが、人間が走るために生まれたとされる超おもしろく、胸熱の狩猟方法。
その名も持久狩猟。
そして、この人間しか出来ない狩りの本質は熱にあります。
そう、キーワードは気温と体温です。
だからこそ、まさしく言葉通り、胸熱な方法でもあるのです。
いったいどういうことなのか?
冒頭で言ったトップランナーたち。彼らの特徴、というか人間の特徴。それが熱を逃がせる高性能の冷却機能の存在です。
そう、発汗作用、つまり汗です。
ほとんどの動物は呼吸によって体温を調節しています。
犬を思い浮かべてください。舌をだらんと出し、ハァハァと呼吸しています。これがある意味、哺乳類、四足動物でのスタンダードな体温調節方法。
が、しかし、人間は違います。呼吸に依存することなく汗をかくことで急速冷却が可能なのです。これが炎天下でもハイパフォーマンスを発揮できる本質のひとつ。
そして、この論文の著者のひとりであるリーバーマン博士のおもしろい主張。それが炎天下に人間は狩りをしていたのではないか?という誰も想像していなかった仮説です。
冒頭の猛暑の中でもハイパフォーマンスを発揮するマラソン選手たちに向けた言葉。
こんなことができる哺乳類はほかにはいない!
この言葉の意味するところ。
それこそ「他の動物が暑くて動けない真昼間を利用して、狩りをしていた」という仮説です。みなさんもライオンやその他の肉食動物を動物園などで見たことがあると思います。
日中の炎天下で彼らは何をしているのか?
寝ているんです。そう、人間の天敵が動き回れない時間帯に狩りをすることで、人間はリッチなタンパク質や栄養豊富な内臓にありつけていた。
そして、おもしろいのがここからです。この論文で指摘された批判。それが炎天下でなくても良いのではないか?という指摘です
ここでもキーワードは熱です。この熱とは気温ではなく体温のことです。
いったいどういうことなのか?
実際の研究・検証によると、この持久狩猟の本質は、獲物となる動物を休みなく交替しながら集団で追い立てることで、獲物である動物の熱暴走によって、動きをカットアウトする、つまり封じるところにあります。
ランニングと呼吸の秘密(呼吸によって体温調節している)
四足動物の哺乳類たちと二足動物の人類の最大にして決定的な違い。
それこそ先程指摘した体温調節の方法。
人間の天敵となるライオンなどの捕食者であっても、四本の足で大地を駆け回る動物たちは、おしなべて呼吸によって体温調節をします。そしてこの方法が仇となるのです。これらの四足動物たちは走っているときにその動き。それこそが最大の弱点となるのです。
キーワードは呼吸です。
なんと四足動物たちはある程度の速い動きをしているときは、呼吸が制限されるという共通した特徴を持っているのです。
呼吸を制限されるとは、言葉を換えると、熱を逃がせない。
よって走っている時は体温調節が出来ず、ひたすら体温が上昇し続けるのです。
想像してみてください。彼らが休む理由のひとつは体温調節です。
その体温調節を行わせないようにひたすら追い立て続けられればどうなるのかを。しかも、それが炎天下なら尚更どうなるのかを。
体温を下げることができなくなった彼らは熱中症のような状態になり、ふらふらと倒れて動けなくなってしまう。
そう、持久力だけで狩りが可能となる。
そこには鋭い牙や爪、強靭な筋力やたぐいまれな俊敏性は必要ない。そして相手に反撃されて怪我をするリスクも少ない。もっと言えば、仮に炎天下であれば、天敵に襲われるリスクも下げることができる。
まとめ
必要なのは集団のコミュニケーション能力とその二本の足で大地を蹴り続けられる骨格や筋肉、腱、効率的なエネルギー機構、これらを合わせた持久力と人間が獲得した発汗能力。
・持久力
・発汗による冷却能力
この3つによって、栄養豊富な肉にありつけていたのではないか?そして、植物や根菜類、果実などと比べ、豊富な栄養が恒常的に供給されることで、余剰なカロリーが生まれ、その余剰のカロリーによって脳が巨大化したのではないのか?
これがこの論文の著者であるハーバード大学のダニエル・リーバーマン博士の驚くべき仮説です。
だからこそ、この論文にあるように、Endurance running and the evolution of Homo
持久走は一見、人間の進化には関係なく見えるが、この持久走が出来たおかげで人間は進化出来たのではないか?という面白い因果関係が導かれるのです。
BORN TO RUN、人間は走るために生まれた。その言葉の本当の意味。それこそ、持久狩猟や死骸漁りなどの長時間にわたるランニングに隠されているのです。
付け加えますが、これはあくまで仮説です。実際に検証した研究者も存在し、再現性があるのは確かめられたようではありますが、タイムスリップが出来ないので、実際の真相は誰にもわかりません。なぜならこれらは一切、化石として残らないからです。
また、気づかれた方もいるかと思いますが、この論文には持久狩猟に関して言及自体はほとんどありません。それもそのはずで、世界屈指の学術誌においてこの仮説を全面に出すとリジェクト、却下される可能性が濃厚だからという技術的な問題が考えられます。
そのため、人体そのものの作りに焦点を当て、その合理性を論理立って説明しつつ、現在でも確認可能ないわば身近なscavenge(死骸漁り)という切り口を利用しつつ人間の進化にとってEndurance Running 持久走がどの程度影響を与えられるのか?を考察しています。
しかし、この論文のある意味余白部分にある、持久狩猟、この論文の中の言葉を借りれば、run some mammals to exhaustion in the heat、日本語では、「灼熱の中、ヘロヘロになるまで獲物を走らせる」というトピックが当時の研究者たちにヒットしたため、論争を巻き起こし、最終的には一般書の形で、つまりベストセラーになったBORN TO RUN走るために生まれたという本に結果的に結実しました。
リーバーマン博士の提案するとても合理的でなおかつ、「まさか、そこに活路を見出すのか?」というある意味ぶっ飛んだ進化論は、もしそれが真実であるのなら、まさしく人間の種としての叡智だとも思えます。だからこそ、僕はこの論文の余白部分も含め、この仮説と論文が大好きなのです。
【千日回峰行の科学】持久力の本質を探る実在するシュレーディンガーの猫
【考察】持久走(ランニング・ジョギング)と人類の進化
そしてここからがこの論文の真価。本当の価値。
この論文がもたらしてくれる最大の学び。それがマクロな視点、いわゆる巨視的な視点です。ランニングの専門家は基本的にミクロな視点、筋肉や骨、靭帯、動作などからランニングを考察します。
しかし、人類史というマクロな視点に立つことで、ランニングという行為の背景、いわゆるコンテキスト・行為の文脈を知ることで、問題をより鮮明に、そして立体的に捉えることが可能となります。
なぜ人間だけが2本足で移動しているのか?というランニング・ジョギングの本質。
このブログを通して少しでも人類史を俯瞰したマクロな視点というものを感じられれば、ランニングというものの違った面白さも見えてくると思います。
それこそつまり、人間にとってランニングとはDNAに刻まれた生まれながらの得意分野であり、人間・人類こそ全動物の中でトップレベルで持久力に特化した存在であり、ほぼ唯一ランニングやマラソンを楽しめる存在である、これが僕が思うBORN TO RUN走るために生まれたという言葉の個人的解釈です。
そして、何を隠そう僕がランニングをしたり持久系スポーツをしている動機のひとつ。
それがこの仮説です。
人間たるもの、持久系スポーツに実は得手不得手は存在しないのではないか?
というもの。
理由は簡単。このブログや論文で説明しているように全人類が持久力に特化した構造を遺伝子の奥底に持っているからです。
これこそがマクロな視点です。つまり個人の特性というミクロな視点ではなく、人類というマクロな視点に立った仮説。
そしてこの仮説を実際に自分で検証した結果、意外といい線まで行けました。
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ということで、次回はそんな人類史というマクロな視点を使って、我々現生人類にとって最もなぞのあの現象。ここまで合理的に作られた人体が行う不合理の極み。かかと着地を改めて考察したいと思います。
今回はあくまで自分の言葉で簡単にまとめただけなので、少しでも気になった方、もしくは人類史を俯瞰するマクロな視点を身につけたい方は是非、この2冊、人体600万年史とBORN TO RUN走るために生まれたを手にとってみてください。
※p307~p350(28章)が目からウロコの必読部分です。正直、この章だけでこの本の元は取れるレベルです※
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是非、p307~p350(28章)だけでも目を通してみてください!
ストーリーには関係ないので、いきなりこの章だけ読んでも全く問題ありません。個人的にはサイエンス系書籍の中でトップ10に入るくらい、「うお~!!すげーー!!」となるくらいマジで面白いです。
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