ウサインボルトはなぜ速く走れるのか?ランニングと筋肉のひみつ

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僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。

仕事をしたいが……そんな方へ|元帰宅部の本気
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世界最速のスプリンターとは誰か?

2008年北京オリンピック男子陸上競技、100m走、200m走で金メダルを獲得し、なんと、次のロンドン、さらにはその次のリオデジャネイロでも同じく100m走、200m走、さらにはリレーでも金メダルを獲得、三大会で合計8個の金メダル獲得した人類最速のスプリンター。

それこそが彼、ウサインボルト。

ウサイン・ボルト - Wikipedia
ウサインボルトがなぜ世界で一番速く走れたのか?

その疑問に斬新な切り口で答えた同郷、ジャマイカ出身の医学研究者エロール・モリソン。彼の提案した驚きの仮説から誰も知らない死ぬほどおもしろい最速スプリンターたちの秘密を暴きたいと思います。

このブログを最後まで見れば、恐らく誰も知らないであろう人類が生み出すべくして生み出した最速スプリンターのなぞとその驚きヒミツがわかる。

是非、最後の最後までお楽しみください!

ウサインボルトはなぜ速く走れるのか?

・ウサインボルト
・ベロニカキャンベル=ブラウン
・マイケルジョンソン
・コリンジャクソン

彼ら最速スプリンターたちに存在するあるひとつの共通点。

それがトレローニー教区

ジャマイカにある小さな地区の名前です。彼ら全員の出自が何かしらこの場所と関係しているという謎。

そもそもなぜジャマイカやカリブ海周辺地域にはトップスプリンターがこんなにも多いのでしょうか?

2006年、ジャマイカで最も有名な黒人医学研究者エロール・モリソン博士は「ウェスト・インディアン・メディカル・ジャーナル」誌にこのような説を発表しました。

黒人が奴隷として連れ去られる前に住んでいたアフリカ西海岸でマラリアが蔓延していたことが原因で、スプリント系およびパワー系スポーツに適した遺伝的変異と代謝変異が起きた。

そう、マラリアから身を守るために、図らずもスプリント競技に有利な遺伝子と代謝変異が起きたのだ、と。

この遺伝的な適応は彼らの有酸素エネルギー産生能力を低下させるものであり、結果的に、エネルギー生産における酸素依存度が低い速筋線維を増やすこととなった。つまり、ジャマイカやカリブ海、はたまたアフリカ系のスプリンターたちが強い理由は元をたどればマラリアというまさかの原因が隠されている

これがウサイン・ボルトをはじめ多くのトップスプリンターたちの秘密ではないのか?

これが、モリソン博士の仮説です。

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【走るウサインボルトの筋肉】低ヘモグロビンで速筋線維が増える?

みなさんもこんなスローガンや宣伝を耳にしたことがあると思います。

栄養失調に苦しんでいるアフリカの子どもたちを助けよう!

現在でも掲げられているこのスローガンを。

実際にアフリカの子どもたちの血液検査をして判明したのは、ヘモグロビン値が低いということでした。つまりアフリカの子どもたちは栄養失調。特に血をつくるのに欠かせない鉄分が不足していると。

【貧血の治し方】すぐに効くマラソンのおすすめ鉄剤

だからこそ、国連はアフリカの子どもたちに鉄分のサプリメントを支給します。

結果、どうなったのか?

重度のマラリアが子どもたちの間で増え、死者数が激増。これによって、WHO(世界保健機関)は国連の決定を撤回し、鉄分のサプリメント配布に警告を出すという事態にまで発展しました。

そう、マラリアがたまたまもたらした生理学的特徴

この悲劇が示唆するひとつの事実。それはマラリアに対抗するためにアフリカの子どもたちはあえてヘモグロビン値を低く設定しているのではないのか?ということ。

実際に「ジャーナル・オブ・ナショナル・メディカル・アソシエーション」誌に掲載された研究ではアフリカ系アメリカ人のヘモグロビン値が生まれつき低いということが報告されています。

さらにアメリカの71万5000人の献血者を対象にした大規模な研究からもアフリカ系アメリカ人はヘモグロビンの遺伝的な設定値が低く、さらにこの値は栄養などの環境要因に影響されないことも報告されました。

なんと国連が子どもたちに配った鉄剤のせいで死者数が激増した悲劇のもととなった生まれつきヘモグロビン値が低いというマラリアに対する遺伝的な適応。

このヘモグロビン値の生まれつきの低さが黒人スプリンターたちにも影響を与えているかもしれないのです。
いったいどういうことなのか?

それが「ヘモグロビンが減ると、速筋線維が増える」という仮説です。

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実際に、マウスやラットにおける研究ではヘモグロビン値が低いと速筋線維を増やすスイッチが押されるようなのです。

UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)が行った研究により、鉄分が不足した餌をマウスに与え続けると、ヘモグロビン値が低下し、後ろ足の速筋線維が超速筋線維に変化することが明らかになったり、スペインで行われた別の研究では、定期的な採血によってラットのヘモグロビン値を低下させたところ、後ろ足の速筋線維の比率が高くなるという興味深い結果が報告されています。

ちなみにマウスやラットは筋線維のタイプを変化させる能力に優れているという事実があり、さらにいえば、これはマウスやラットが生きている間におこった発育上の影響によるものであるため、遺伝子の変化による進化や適応ではありません。

よって、これらの研究が示している結果がそのまま人間に当てはまる可能性は低いと考えられます。

残念ながらこれらの実験を人間に行ったことはないようなので、「ヘモグロビンが減ると、速筋線維が増える」仮説はまだ推測の域を出ていません。

しかし、何かしらの影響を及ぼしている可能性は十分に考えられます。

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そして実際にこのような興味深い事実もあります。それはトップスプリンターたちがいる国は長距離走が致命的に遅いという事実です。なんとウサインボルトの出身地であるジャマイカでは、1万m走の国内記録は、ロンドンオリンピックの参加要件すら満たしていなかったのです。

速筋線維が多ければ多いほど、長距離走が遅くなる

このような事象からもマラリアに適応する進化のために、結果的に短距離走に有利になった。逆をいえば長距離走にとって不利な身体的な環境が整ってしまったと言えるのではないでしょうか?

とここまで聞くと、こう思った方もいるかもしれません。

マラリアはアフリカの人に多いはずなのに、なぜ同じケニアやエチオピアと言ったアフリカのマラソン強豪国はその影響を受けないのかと。
なぜ彼ら彼女らは短距離走ではなく、長距離走が得意なのかと?

答えはシンプルで、彼らが高い場所に住んでいるからです。そのため、マラリアを媒介する蚊自体が少なく、その影響もほとんど存在していないのです。

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ウサインボルトの筋肉とマラリア

ウサインボルトなど世界屈指のスプリンターのもとをたどればマラリアというひとつの適応・進化が見えてくる。

その最たるものがこれ。

鎌状赤血球

みんさんはこの鎌状赤血球という専門用語を聞いたことがあるでしょうか?

生物の授業で習った方もいるかもしれませんが、この鎌状赤血球もスプリンターにある意味恩恵を与えています。

鎌状赤血球症 - Wikipedia

Sickle cell anaemia, artwork

鎌状赤血球とはその言葉通り、赤血球の形が通常の丸い形ではなく、三日月形になった赤血球のことです。

この鎌状赤血球はアフリカに住む人々に特異的に発生します。

なぜか?

それこそマラリアに適応するためです。

マラリアが怖いのはこのマラリアの原虫が赤血球を食いつぶすからです。

赤血球が食いつぶされることで、血液の運搬が阻害され、貧血症状が発生してしまう。最悪の場合、死に至るほど危険な病気なのです。

ということで人類が行った素晴らしくも合理的な適応。

それがこの三日月形です。

この三日月形によって、マラリアの原虫が赤血球を食いつぶす前に赤血球自体が壊れその影響を最小限に抑えるというとても合理的な適応、進化なのです。

しかも、興味深いことに、この鎌状赤血球になれば、つまり鎌状赤血球症を発症すれば寿命自体が短くなるため、鎌状赤血球遺伝子が集団全体に広まることはなく、アフリカ系アメリカ人の間では、鎌状赤血球遺伝子は着実に減っているというデータも存在します。

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そして、おもしろい事実がこのマラリアに適応した鎌状赤血球形質は短距離競技には影響を与えないのです。

しかし、その反面、有酸素性能力(持久力)を必要とする競技では、大きな影響を与えます。なんと血流が阻害されて死に至る人もいる。そんなレベルで。

では、なぜこの鎌状赤血球形質がスプリンターに恩恵を与えるのか?

この恩恵という言葉を使ったわけは、競技選択の幅が狭まるからです。身体的に長距離走が出来ない身体であれば、おのずと短距離走を選ぶ人口も多くなります。よって、鎌状赤血球形質のおかげで、ある意味その才能を遺憾なく発揮できる舞台に立てる可能性が高まるのです。

同じアフリカなのにアフリカ出身の血筋を持つスプリンターはマラリアの影響で短距離が速くなり、翻って、同じアフリカでもその住む場所が高い場所ゆえ、逆に長距離のマラソンなど持久力が必要な競技が速くなる人々もいる

なかなか興味深くはないでしょうか?

まめと

ウサインボルトをはじめ、世界のトップスプリンターがなぜ速いのか?

その理由の一番の根っこにはマラリアという病気に適応するための進化が隠されており、このマラリアの影響を最小限にするために、鎌状赤血球や低いヘモグロビンの数値、また結果的にこれらの変化によって有酸素エネルギー産生能力の低下、つまり持久力が大幅に下がることにより、エネルギーを生み出すのに必要な酸素にそこまで依存しない瞬発力に特化した速筋線維を遺伝レベルで増やすことが可能となった。

このような面白いカラクリが隠されているのです。

ちなみにウサイン・ボルトの出身地であるジャマイカにある小さな地区、トレローニー教区。

この場所から世界に羽ばたいたワールドクラスのトップスプリンターがなぜこんなにも多いのか?

実はその理由は遺伝子検査からも明らかになっていません。

そして、ある意味それが正解なのです。「えっ、つまりどういうこと?」と思った方はスポーツと遺伝子のおもしろさについて深ぼったこちら

【ジーンクエスト】スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学【ランニングDNAとは?】

この動画の後半でご紹介した遺伝学者キャサリン・ノース博士の示唆深い発言を是非ともお聞きください。

より詳しく知りたい方やスポーツ科学に興味が出てきた人はこちらの名著スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学を是非ともお読みください。

とても学びが多い本となっています。


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