みなさんどうも、こんにちは!
僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。
いきなりですが、みんさんの足の「腱」は硬いでしょうか?
「えっ?どういうこと?」と思った方は言葉を換えてこう質問してみます。
いきなりそう言われてもさらに頭にハテナが飛び交うと思いますが、今回はこの体の柔軟性に関係する筋肉の先端にある「腱」と呼ばれる部位が実はランナーにとってとても面白い役割を果たしているという事実から、実際の研究ベースでトレーニング科学の面白さを見ていきたいと思います。
みんさんが耳にしたことがあるかもしれないランニングにまつわるある噂の真相など、表層的ではなくより深ぼった面白い知識とその知識から派生した誰でも再現可能な「超」具体的な楽に速く走るヒントもエビデンスベースで提示します。
特にコーチや指導者の方は是非、最後までご覧ください。
選手たちが陥るスランプ。このスランプの脱出につながる「最新のヒント」もわかりやすく提示しています。
目次
アキレス腱の硬さとランニングエコノミー
有名どころでは「アキレス腱」。かかとにある腱。この腱の本体はふくらはぎの筋肉だったりします。ざっくり言うと骨と筋肉をつなぐ連結部分こそが、この腱と呼ばれるもの。
この腱の最大の特徴のひとつはやはり「弾性・弾力性」です。言葉を換えると、やわらかさ。伸び縮みできるのもそこにやわらかさ、弾性が存在するから。だからこそ、足首の関節が良い具合で動くのもこの腱や靭帯などの結合組織のおかげ。
そしてこの弾力性が走るという行為の要になってきます。
一体なぜか?
超簡単に言えば、力を蓄えることができるから。まさしくバネ。バネのように縮むことでそこに弾性エネルギーとよばれるエネルギーを蓄えられ、それを上手い具合にはじけさすことで推進力を得る。
あの現象に近いものが足で起こっているようなイメージです。もちろんあくまでイメージ。
よって、ランニングにはアキレス腱などのバネがとても重要になって来ると言われる由縁です。なぜならこの腱のバネがない(上手く使えない)と上手く効率的に跳べないから。結果、筋肉を使ったパワープレイのランニングスタイルとなってしまい長時間、快適に効率よく走ることが難しくなる。
この弾性エネルギーを上手く使うために足はとても精密で面白い構造をしています。気になる方は
など各自調べてみてください。
きっと「面白い!」となると思います。
これに関しては筑波大学の研究者が書いたアスリート向けのおすすめ解剖学書籍がおすすめです!
【スポーツ指導者も知らない!?】トレーニングの新常識
↓筑波大学の研究者が書いたアスリートに特化した解剖学書籍↓
名著。ここに「ウィンドラス機構」などのランニング知識も載っています。長距離ランナーはもちろんですが、スプリンターにとってもかなり示唆深い話が載っているのでおすすめ!ハムストの肉離れの解説は「なるほど!」と唸ってしまいます。
そして、より面白いのがこんな事実です。
極論を言えば
アキレス腱は硬ければ硬いほど良い!
スポーツの才能とは何か?を深ぼったこちらの名著ではこう指摘されています。
COL5A1遺伝子に関る研究によって、ある種の変異型をもつ人々は身体がより柔軟ではなく、ランニングを行うのに有利に働く可能性があることも明らかになっている。これは、より大きな弾性エネルギーを蓄えることのできる硬いアキレス腱がランニングエコノミーの向上と関連があるためだろう。
このCOL5A1遺伝子とは簡単に言うと、腱などの結合組織の柔軟性を決めるひとつの重要な遺伝子です。
この遺伝子の変異型を持っていると生まれつき腱が硬くなりやすく、結果、ランニングエコノミーが向上する。
ここです。
つまり、硬い腱は硬ければ硬いほど弾性エネルギーを蓄えることができる。もちろんカチカチではだめですが。柔軟性という言葉とはある意味反対で、ランニングという側面で言えばアキレス腱は硬ければ、硬いほど弾性エネルギーを蓄えやすく、結果、効率的な一歩につながる。
ということで、こんな面白い結論が導かれるのです。
生まれつき体が硬い人は効率的に走れるかもしれない
「ランナーは体が硬い方が良い」という話がまことしやかにささやかれているのも、これで説明ができるのです。ちなみにここを厳密に言うと、あくまでスピードという結果論は相関関係でしか語りえないため、体が柔らかくても速いランナーはもちろん多いですし、体が硬くても遅いランナーももちろんいます。たとえば生まれつき体が硬くても関節の可動域が極端に狭い場合はその才能を存分に生かせないなど。
と言っても、こういう見方や捉え方ができること自体が重要。
さらに補足すると、この体の硬さ、柔軟性に影響を与える遺伝子を持つトライアスリートを対象とした研究でわかっていることとしては、鉄人レースと呼ばれるアイアンマンレース。このレースのランニング部門では対象選手は速く走れますが、スイム部門とバイク部門ではそうでもないことが判明しています。これはつまり、遺伝的に硬いアキレス腱を十分に活用できる部門でのみ、より良いパフォーマンスを発揮できるということ。
このように体の生まれつきの硬さはランニング以外の他の競技では影響を与えない。もしくは競技によっては悪影響を及ぼす可能性もあります。
が、ランニングという人間が古来から行ってきた運動においては、プラスに働くという面白い関係も見えてきます。
【ケガのリスク】体が硬いことの最大のデメリット
と、ここまで聞くと
ランナーにとって体が硬いことは良いことだ
と思われる方も多いと思いますが、事態はそんな簡単ではなく、ある意味ここが面白く、この特性には致命的な弱点も存在します。
さきほどのアイアンマンレースの研究には実は続きがあって、研究者はこう指摘しているらしいのです。
だが、その非柔軟性型の遺伝子変異は、アキレス腱損傷のリスクの増加とも関連している
つまり体が生まれつき硬い才能によって生まれつき効率よく走れますが、その反面、ケガのリスクが増加するのです。もしかするとこのような研究などからケガの予防には柔軟性が大切という言説に繋がっているのかもしれません。
この話に関して補足すると、柔軟性を上げてケガのリスクを減らす方法。
ストレッチ
ケアの代表格であるストレッチなどで実際のケガのリスクが下がるという因果関係は現時点では証明されていません。「はあ、バカなことを言うな!」と声を荒げたい方はまずはこちらでファクトチェック、事実確認をしてみてください。
というのも、まあ当たり前と言えば当たり前で、この研究などは体の柔軟性を決める遺伝子の話。つまり先天的な話。努力でどうしようもない現象を取り扱っているのです。
牛乳をたらふく飲めばその分身長が伸びるでしょうか?もしそうであれば、みんな高身長になっているはずです。遺伝というのは努力でどうこうできる代物ではない。
と聞くとネガティブな気持ちになってしまいますが、遺伝子自体の発現、才能の組み合わせは環境や努力である程度コントロールできると僕は考えている派です。運動をほとんどしてこなかったランナーがスロージョギングだけで速くなれるのであれば、この文脈で僕は説明できるのかなと実は考えています。
【なぜ??】スロージョギングだけでフルマラソン2時間40分切り(サブ40)を達成出来たのか
そして、より面白いのがここからで、それこそ、スポーツ科学の真骨頂。
だったら事前にDNAを検査すれば自分の適正がわかるのではないか?
ケガのリスクや向き不向きのスポーツがわかるのではないか?
という現代ならではの解決策も考えうるのです。
実際にこちらのスポーツの才能とは?遺伝で決まるのか?でも解説しましたが、多くのNFL、アメフト選手がアキレス腱や膝の前十字靭帯の損傷を引き起こす可能性がある「損傷遺伝子」の検査を利用するようになってきているとのこと。
★【現代ならでは】面白いサービス(プロモーションではない!)★
※文部科学省・厚生労働省・経済産業省「ヒトゲノム・遺伝子解析研究に関する倫理指針」に基づき運営※
COL1A1やCOL5A1情報は知れないので、何が知れて何が知れないのかはご自身で確認してみてください。
これらの遺伝子情報はあくまで身長や体重のような基本的な情報に過ぎないので、絶対視はしないでください!身長が低くてもすごいアスリートや体重が重くともハイパフォーマンスを発揮するアスリートはたくさんいますので、「良い悪い」「センスがあるセンスがない」という判断基準にはなりえません。
↓公式HP↓
口腔粘膜でスポーツ遺伝子を調べる【DNA EXERCISE】
というような数十年前までは想像もつかなったかケガのリスクとの向き合い方、才能との向き合い方が爆誕していたりもします。このようなスポーツ科学、遺伝子の面白さを深ぼりたい方はこちらの書籍「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学」がおすすめです。
気になる方はチェックしてみてください!
難解ですが、とても面白い知見がエビデンスベースで散りばめられており、おそらくこの本から持ってきただろう知見をトレースしている書籍もあるくらいの名著です。ちなみにその本はあの「運動脳」笑。文献リストにこの書籍はなかったですが、「絶対この本から引っぱってきたやろ!」とツッコミたくなる箇所がありました笑。
ということで、なんと体が生まれつき硬い人は走る才能があるかもしれない。
つまり、アキレス腱の硬さがランニングエコノミーの向上に繋がっている。
そしてなんとこのアキレス腱の硬さはトレーニングで硬くできるのです。生まれつきの遺伝なんて関係なく、全ランナーが。
【プライオメトリック】マラソントレーニングによってアキレス腱は硬くできる!?
それこそがこの研究。
長距離走のパフォーマンスにおけるプライオメトリックトレーニングの効果
この研究結果がズバリ、プライオメトリックトレーニングと呼ばれる瞬発系のジャンプトレーニングによって、地面からの衝撃で腱自体が硬くなって、結果ランニングエコノミー向上につながるという「超」面白いもの。
↓アキレス腱の硬さはトレーニングで硬くできる!?研究↓
The effect of plyometric training on distance running performance
『長距離ランナーのパフォーマンスにおけるプライオメトリクストレーニングの効果』
被引用回数804件(Google Scholar調べ)ということからも、ランニング関連では結構メジャーな研究のよう。プライオメトリクストレーニングによってランニングエコノミーが改善する。その理由がlower leg musculotendinous stiffness (MTS)と呼ばれるふくらはぎなどの腱が硬くなるから!でも、この研究を挙げている複数の専門家のニュアンスが「~らしい(断定していない)」が多く、いろいろ論争はありそう(あくまで個人的感想)。
この研究結果は実験参加者数がそこまで多くなく、尚且つ年齢層のバリエーションも狭かったはずなので、確実性にやや疑問が残っているのも事実ですが、ひとつ言えることはプライオメトリックトレーニングと呼ばれるトレーニングは長距離ランナーにとって効果的であるという事実です。
【ジャンプトレーニングと筋トレ】マラソンランナーの異なるスピードでのランニングエコノミーに関するストレングストレーニングプログラムの効果
なぜなら、つい先日(2024年2月)発表されたランナーにとってかなり参考になる知見を提供してくれるこちらの素晴らしい研究。
中・長距離ランナーの異なるスピードでのランニングエコノミーに関するストレングストレーニングプログラムの効果:メタ分析によるシステマティックレビュー
この研究の結論も、ここにあるように「プライオメトリックトレーニング」自体がランニングエコノミー向上に効果的であることを示唆しています。
しかも信頼性が高い解析手法を使って。
さらに「超」面白いことも指摘されており、なんとこのプライオメトリックトレーニングは遅いスピードのランニングで効果的。具体的にはキロ5分(時速12km)より遅いランニングでのランニングエコノミーの向上に繋がっているようなのです。
というような話も実はこんな文脈に乗っかって展開されているのです。
それこそがこの研究の最も面白いところ。
タイトルにある「ストレングストレーニングプログラム」
いわゆるウエイトトレーニングなどの筋トレ。このような筋トレを組み合わせたメニューやさきほどのプライオトリックトレーニング、もしくはガッツリ高重量を扱う筋力トレそれぞれがランニングエコノミーアップには効果的ということが明らかになったのです。
バーベルスクワットなどガッツリとした高負荷の筋トレと瞬発力を鍛えるトレーニング。そう聞くと短距離選手のような印象がありますが、なんとこの手法、中・長距離ランナーにとっても効果的という少し意外な事実。
【大迫傑も使うおすすめ骨伝導イヤホンshokz OpenRun Pro】ランニングやマラソントレーニングを楽にする方法
が、しかし、実際に海外のプロランナーでも高負荷の筋トレを取り入れている選手も多く、日本では早稲田大学で大迫傑選手をサポートし、現在は住友電工陸上競技部の監督である渡辺康幸さんなども従来の
筋トレによって体が重くなると不利になる
このような言葉でウエイトトレーニングを推しています。
私も選手には、走ること以外にフィジカルトレーニングの重要性を強く説いています。つけるべきところに筋力をつけ、効率のいい走りをする。それが結果的に故障の予防につながるのです。
↓住友電工陸上競技部の渡辺康幸監督の筋トレの話は以下から引用↓
「限界は何が決めるのか?持久系アスリートのための耐久力の科学」をp353を参照。現代の王道トレーニングこそ、やはり最強!
↓【限界は〇〇が決める】持久系アスリートのための耐久力の科学↓
限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力の科学
↓【早稲田時代の教え子】大迫傑選手の著書↓
ちなみにオリンピック競技全般(Olympic time-based sports:OTBS)のタイムトライアル競技におけるストレングストレーニングの効果を探ったレビュー論文(ランダム比較化試験のメタ分析)でも「高重量の筋トレは年齢やトレーニング期間に関係なく練習を積んだアスリートにとって最上級の(素晴らしい)インパクトを与える」と指摘されています。
↓元論文↓
そしてこのランナーのための筋トレ研究が示唆しているのはその負荷にあります。それこそ、そこそこきつい中途半端な重さもしくは筋肉の動きが伴わない筋トレなどよりガッツリとした高負荷・高重量。もしくはプライオメトリックトレーニングがランニングエコノミーを改善するということ。
これが信頼性のおける研究手法で明らかとなった。
また、このようなことも示唆されています。
これらのトレーニングはVO2MAXが高いランナー、速いスピードで走れるランナーにとってランニングエコノミーの改善には効果的かもしれない。
特に高負荷・高重量の筋トレに関しては。
特にガッツリトレーニングをしているマラソンランナーで限界を感じている方であれば、このどちらか(プライオメトリックトレーニングもしくは筋トレ)、もしくはふたつを行えば限界を突破してより効率的なランニングができる可能性がある。
もしランニングエコノミーをアップしようと思えば、高負荷の筋トレかプライオメトリックトレーニング、もしくはその組み合わせが最高!
というのがこの研究のハイライト。具体的な筋トレの重量設定については以下で補足しておきます。
上記のストレングス研究によると、バーベルスクワット、デッドリフトなど80%1RM以上の負荷もしくは最大7RMまで!
個人的な意見だと、ランナー王道のスクワット系トレーニングはできるだけガッツリとした負荷が良さげ!もろもろ考えると4回~6回で限界を迎えて持ち上げられなくなるレベルの高負荷くらいが良さげかな!?(詳しくは本物の専門家に尋ねてください!)。
その他具体的なトレーニング別の負荷の掛け方はMethods “2.4.2 Strength Training Intervention”を参照。
↓元論文↓
★【これでOK】ド素人でも英語の論文を簡単に読める裏技★
↓現役筋トレ研究者が語る筋トレの極意↓
【テストステロンおすすめ筋トレはこれ!】50歳からの科学的「筋肉トレーニング」若いときとは違う体をどう鍛えるか
↓【入門書】おすすめ筋トレ書籍↓
東京大学から出ている筋トレの入門書。わかりやすい!アスリートにとっては負荷だけでなく筋トレの「動作速度」のバランスがとても大切だと思われます。詳しくはp12を参照。この辺りのノウハウは論文に現れないので、それこそトレーニングの専門家の出番!筋トレは奥深し!
まとめ
もう一度簡単にまとめると、縄跳びのようなプライオメトリックトレーニングと呼ばれる瞬発系のジャンプトレーニングは長距離ランナーにとって効果的。なぜなら腱が硬くなって効率的に足のバネを使えるから。また高負荷の筋トレもランニングエコノミーをよりアップさせる可能性が高い。
これが信頼のおける研究としてエビデンスベースで示唆されたのです。
カラダは面白い!
トレーニングは面白い!
研究は面白い!
とその雰囲気が少しでも伝われば幸いです。
こういう知見を活用するとより効率的に誰でも再現できる属人性に頼らないトレーニングが可能になるのかもしれません。
【おすすめマッサージガン】ストレッチやマッサージは本当に効果がないのか?
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