【2.5倍アップ】糖質制限ダイエットで脂肪燃焼効率を上げまくるとどうなるのか?【スーパーノヴァ実験と低糖質高脂質の食事】

速く走るための方法を考える

みなさんどうも、こんにちは!

僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。

カフェインを摂るとパフォーマンスがアップする。

みんさんもそんな話を聞いたことがあると思いますし、実際にカフェイン入りの商品は数多く売られています。

実はこのカフェインとパフォーマンスアップの効果を発見し、さらによく売られているカフェイン入りエナジージェルの誕生に貢献したひとりのスポーツ科学者。

それがルイーズ・バーグ博士。

Louise Burke | ACU Researcher
sports nutrition; exercise metabolism; supplements; low energy availability; ketogenic diet

彼女こそ、AIS、オーストラリア国立スポーツ研究所でスポーツ栄養学部門長を歴任したその道ではトップオブトップの科学者です。

そんな彼女が近年行ったとてもユニークであり、賛否両論を巻き起こした「超」がつくほど興味深い実験が存在します。

その名も、スーパーノヴァ(実験)。よく歌のタイトルなどになっている「超新星」

超新星 - Wikipedia

これは星が爆発した光やその天体を表した言葉であり、そんないかつくもインパクトのある名前が付いた恐るべき実験、それがスーパーノヴァ(実験)。

今回はこのスポーツ科学界にある意味激震を走らせた驚くべき実験の内容とその意義を、「なぜ」を切り口に深ぼっていきたいと思います。おそらく日本語でここまで解説した情報はないと思うので、今回は最後まで見た人だけがしっかりとしたアドバンテージを得られるように構成しました

日本では全く知られていない壮大な実験の何たるかを是非、最後までお楽しみください。

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糖質制限ダイエットで脂肪燃焼効率を上げまくるスーパーノヴァ実験

まず最初にお伝えしたいのが、今からご紹介する実験の論文が激ムズであるということ!

実際の論文はどんな感じなのか雰囲気だけでも是非、感じてみてください。

ちなみにルイーズ・バーグ博士はスポーツ栄養学に科学的な厳密さを取り入れ、数々の論文を発表してきた人物なのでそのきめ細やかさ、というか精密さはさすがであり、ある意味この難しさも納得だったりします。

①「低糖質、高脂質食は運動のエコノミー(効率性)を損ない、エリート競歩選手が行う集中的なトレーニングで得られるパフォーマンスの恩恵を無効にする」

Just a moment...
※コメント※
スーパーノヴァ1の論文。スポーツ科学、スポーツ栄養学を使った革新的な実験。「結果が違ったらどのようなタイトルになっていたのか?」と想像が膨らむ面白くも難しい論文。

②「ケトジェニック低糖質、高脂質ダイエット:エリート選手の持久力スポーツの未来?」

Just a moment...
※コメント※
著者はルイーズ・バーグ博士ひとり。彼女の考えやロジックが詰め込まれた論文。1回目のスーパーノヴァ実験のまとめ的な論文です。難しい内容には変わりないのですが、ベースとなる知識はここでゲット。

ということで、僕自身も実際にどこまで理解できているのか怪しいところもあるので、実際の一次資料を提示しています。もし気になる方は各自、深ぼってみてください。

では、まずこのスパーノヴァと名付けられた実験が「なぜ」注目されたのか?その理由2点をサクッと説明します。

①これまでしっかりと焦点が当てられていなった仮説を実験ベースで詳細に検証した
②この実験結果で寄せられた批判を盛り込んで、改めてスーパーノヴァ2と呼ばれる新たな実験が行われた

なんとこの初期の実験は大規模な賛否両論を巻き起こしたため、第二弾が行われたという経緯があるのです。

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では、そもそもこのスーパーノヴァと呼ばれる実験は一体どんな実験だったのでしょうか?

かなりかみ砕いて言うと、アスリートをスーパー脂肪燃焼マシンに変身させるという実験です。

つまり、脂肪燃焼効率を最大限に上げて上げて上げまくるとパフォーマンスはどう変化するのか?それを深ぼった実験です。そして、その方法が低糖質高脂質の食事、通称LCHF(Low Carbohydrate High Fat)、みなさんも良くご存じの糖質制限に近い食事方法を用いて、です。

みんさんはこんな事実をご存じでしょうか?

それが30gで225キロカロリー

エネルギー代謝を科学したこの名著(運動しても痩せないのはなぜか: 代謝の最新科学が示す「それでも運動すべき理由」)を紐解くと

すべての動物が脂肪という形でエネルギーを蓄えるように進化したのは、わずか1オンス(約30g)の脂肪に255キロカロリーという、信じられないほどのエネルギーを詰め込むことができるからだ

と指摘されており、これはジェット燃料と同じくらいで、ニトログリセリン、ダイナマイトのエネルギー密度の約5倍以上、一般的なアルカリ電池の100倍に近い数値とのこと。

つまり、わずか30gの脂肪が持つ本来的なエネルギーはここまで驚異的に大きいのです。

Job # 140280
University Hall
JUN-27-2014
Photo by Jo McCulty
The Ohio State University

が、なんとオハイオ州立大学のジェフ・ボレック博士とスティーブン・フィニー博士(低糖質高脂質食研究のエキスパート)が2016年にメタボリズムという学術誌に発表した研究で明らかにされたのは、中程度のペースで3時間のトレッドミルを走る間、エネルギーを脂肪に頼った割合は高脂質食のグループは88%だったのに対し、一般的な糖質の多い食事をしたグループは56%

つまり、一般的な糖質の多い食事では脂肪のエネルギーを半分程度しか活用できていないという結果であり、その逆の高脂質の食事を摂ったグループではなんと88%という

従来の通説からすると、この脂肪燃焼率は桁外れです

とボレック博士に言わせるレベルで脂肪からのエネルギーを活用できていたのです。何が言いたいかというと、食事内容を変えるだけで、脂肪燃焼効率が爆上がりするのです。

このような数多くの代謝変換(糖質燃焼から脂肪燃焼有意:ケトン体有意)の研究をがっつりとプロアスリートに適応して、スーパー脂肪燃焼マシンと化した選手をつくり、オリンピックのメダリストを生み出そうというプロジェクトこそ、スーパーノヴァ実験の目指すべきところに他なりません。

オーストラリアというスポーツ科学大国ならではの革新的な実験であり、スーパーノヴァと名付けられたその理由こそ、おそらく我々の脂肪が持つ底知れないエネルギー量にある

そう、たった30gの脂肪でダイナマイトのエネルギー密度の5倍以上、アルカリ電池の100倍に近いその潜在的なエネルギー

私たちの体には一体何キロの脂肪がついているのでしょうか?

そうです。だからこそスーパーノヴァ、星が起こす大規模な爆発によって光り輝く天体、超新星。その莫大なエネルギー量と活用方法を連想させた実験名なのも納得いただけるかと思います。

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糖質制限ダイエット(低糖質高脂質食)で脂肪燃焼効率を上げまくるとどうなるのか?

では、このスパーノヴァ実験の結果はどうだったのでしょうか?

2016年に発表された実験結果は、持久系アスリート、この実験では競歩の選手が低糖質高脂質食(LCHF食)を3週間続けると”脂肪燃焼マシン”と化すことが明らかになりました。

具体的には約2.5倍

普通の糖質食を摂っているアスリートの2.5倍の脂肪を燃やせる体になったのです。が、しかし、大きな問題も発生しました。それが脂質の代謝反応にはより多くの酸素が必要になることです。つまりエネルギー効率自体が落ちることで、以前より多くの酸素が必要となってしまった。

よって何が起こったのか?

タイムが悪くなったのです。脂肪を燃やせる体にはなったのですが、そのマイナス面が強く出てしまい結果的にパフォーマンスが低下してしまった。

が、しかし、この実験の示唆深いところは、アスリートの限界を深ぼったこの名著によるとこう記されています。

限界は何が決めるのか? 持久系アスリートのための耐久力の科学

だが実験で低糖質高脂質食、LCHF食を摂取したアスリートは、その後の数週間で好成績を連発した。


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かと言って、この結果をそのままマラソン選手などにあてはめるのは危険です。今回の実験対象者は競歩の選手。

なぜ競歩なのか?

それは運動強度と関係しています。マラソン競技と糖質の関係を詳しく知りたい方はこちらでルイーズ・バーグ博士のトレーニングの考え方ととに深ぼっているので、是非、ご参照ください。

【東海大学と國學院大学】箱根駅伝で起きた最大の悲劇【マラソン×糖質】

補足すると、この実験「スーパーノヴァ」はあくまでプロやタイムを狙うシリアスアスリートを対象としています。よって、趣味ランナーでは低糖質高脂質食(LCHF食)は大きな恩恵を得られる可能性もありますし、インターバルのかかりづらいウルトラマラソンやアイアンマントライアスロンなどの「超」がつく持久系競技には効果的である可能性が示唆されていたりもします。

また、ランナーにほどほどの低糖質高脂質食を勧めているウェストバージニア大学のマーク・ククゼラ博士は実際に「イヌイットの人々は炭水化物を一切食べることなく健康を維持していた」とも指摘しています。

一般ランナーがどのようにこれらの食事と向き合うかは、面白いエピソードとともに再度取り上げますので、是非最後までご覧ください。

トップアスリートを実験台にして食事による代謝変換を実証した最初のスパーノヴァ実験。

結果はシンプルで、持久系競技のシリアスアスリートに低糖質高脂質食は不向きで、高糖質食のほうがパフォーマンスは高まるという事実。

この研究結果は反論を連ねる一本の論文が出るほど、注目を集めました。

↓スーパーノヴァ実験反論の論文↓

「(実験の)やり方はそれでいいのか低糖質高脂質ダイエットで観察されたパフォーマンス低下の有効性に疑問を呈す」

Just a moment...

【スーパーノヴァ2】低糖質高脂質ダイエットでの実験

それらを受けて、ルイーズ・バーグ博士はもう一度しっかりとプロトコル、実験の設計などを見直して、第2弾となる実験、スーパーノバ2を実施します。

では、そんなスーパーノヴァ2の結果はどうだったのでしょうか?

この実際の論文のタイトルにもある通り「reproducible」つまり、もう一度、プロデュース出来る、言い換えると、前回と同じ結果が再現されたのです。

そう、脂肪の燃焼効率は爆上がりしたが、マイナス面である酸素消費量も激増したため、パフォーマンスが低下し、結果タイムが落ちた。

よって、本来の「再現性」という意味では他のチームが再現していないため、信頼性がやや低いのも事実ですが、これら2つの実験結果の示唆することは至極当たり前で、高強度のインターバルがかかる可能性がある持久系競技において低糖質高脂質やケトン食と呼ばれる食事方法は脂肪燃焼を飛躍的に向上させはするが、マイナス面が大きくパフォーマンスアップには不向きである。少なくともパフォーマンスを上げるのなら、高糖質、つまり白米やパスタなどの食事が効果的である、ということです。

「自信喪失は免れた:ケトジェニック低糖質、高脂質食でのエリート競歩選手の運動のエコノミーとパフォーマンスの損失(低下)は再現される」

Crisis of confidence averted: Impairment of exercise economy and performance in elite race walkers by ketogenic low carbohydrate, high fat (LCHF) diet is reproducible | PLOS ONE

※コメント※
スーパーノヴァ2の論文。冒頭の表現が全てを物語る!反論に答えるアンサー的な論文。スーパーノヴァ1の論文に比べて難易度がさらにレベルアップしているな~と僕は読んでて思いました。ムズい!

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そして、現在はなんとケトダプテーションという脂肪燃焼にまつわる代謝変換がどれくらいの期間でなされるのか?に焦点を当てた実験、ヴァージョン4、つまりスーパーノヴァ4が計画、実施されているとのこと。

さらに、この研究から派生した脂肪燃焼効率をさらに加速させるケトジェニックサプリメントの有効性の研究などもいろいろと行われており、スポーツ栄養学の裾野を広げたとても意味のある面白研究だと僕は捉えています。

「早急なケトジェニックダイエットとケトン体サプリメントの摂取は競歩選手のパフォーマンスを損なう」

Acute Ketogenic Diet and Ketone Ester Supplementation... : Medicine & Science in Sports & Exercise
st and real-life 10,000-m race before and after a 5-d isoenergetic high-CHO (HCHO, ~60%–65% fat; CHO, 20% fat; n = 9) or LCHF (75%–80% fat,
※コメント※
スーパーノヴァ実験が触媒になって計画されたと思われるケトジェニックサプリメントの研究。過去に科学を標榜とするワールドクラスのロードバイクチーム(旧チームスカイ:現イネオスグレナディア)がこのようなサプリメントを使っていたのですが、「う~ん、プラシーボ」という感じなのか?競技の違いはどこまで反映されるのか?と考えざるを得ない良き研究。少なくとも営利企業がバックにはいなさそうで信頼性はありそう!

糖質制限ダイエット(低糖質高脂質食)でパフォーマンスをアップさせる具体的な方法

では、ここからこのスパーノヴァの実験から得られた知見を僕らのようなアマチュアアスリートにあてはめて考えていきたい思います。

まずは適用範囲がかなり狭いということが言えます。つまり、ある一定のゆるやかなペース、ゼエハアしないレベルの運動をし続ける競技には低糖質高脂質食、LCHF食での代謝変換は有効です。この代謝変換を行うと、脂肪という人間一人で核爆弾を超えるであろうエネルギーの恩恵を得られます。つまり、補給しないで運動し続けられる。実際にフルマラソン無補給などの逸話は数多く存在します。

かつて日本にいたとされる伝説の飛脚の信じられないパフォーマンスもこれで説明できるかと個人的には思っています。

【解説】糖質制限ダイエットが秘密!?伝説の飛脚の持久力の科学

が、しかし、少しでもペースが上がったり息が上がって糖質を使ってしまえば、そこでゲームオーバー。ある意味そんな諸刃の剣のような印象です。

ということで、個人的に興味深い代謝変換の面白い成功例とその具体的な活用方法をご紹介して終わりにしたいと思います。

それが彼、エイドリアン・バリンジャー。彼の職業は登山家です。そんな彼が代謝変換で成し遂げた偉業こそ、エベレスト無酸素登頂。

そう、自分の肺だけで世界一の山を制覇したのです。

実は彼は2016年に同じ試みをして失敗しています。そして、その失敗の理由が山頂間近でのエネルギー不足、ハンガーノックです。

そんな彼は科学にその答えを見出します。

カリフォルニア大学デイビス校のスポーツパフォーマンス研究室で行った実験によって判明したこと。なんと彼の代謝は、心拍数が1分間に115という比較的低い段階で脂肪燃焼から糖質燃焼に切り替わっていたという事実でした。

そう、これが失敗の理由。つまり、脂肪燃焼効率の悪さ。

よって、彼は練習メニューに食前の持久力トレーニングを増やし、さらに高脂質の食事に切り替えました。

切り替えた当初はパフォーマンスの低下が顕著に現れ、かなり辛い思いをしたようです。

ところがしばらくすると、5時間のトレーニングでも何も食べずにすむようになり、4ヵ月後に再び研究室を訪れると、エネルギーをつくる燃焼の主体が脂肪から糖質に切り替わるのが心拍数115から141に上昇し、中程度の登りにおける脂肪の利用度があがって糖質を温存できるようになっていました。

そう、食事による代謝変換と食前のトレーニングにより彼はエベレストの無酸素登頂という偉業を達成したのです。

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まとめ

これらの研究や実験を通して人間のエネルギー代謝そのものを俯瞰すると、あまりスピードを出さず一定のペースで走り続ける持久走こそが人間が本当に得意としており、逆を言えば、インターバルがかかるなど、息を切らしてスピードを出す必要がある持久走は人間にとって実は苦手分野であるとも言えるかもしれません。この視点を持って戦略を柔軟に変えることで、マラソンをより楽しめるヒントになるような気がします。

【おすすめ有酸素運動はこれ!】なぜ人間はランニング・ジョギングが得意なのか?

参考文献を全て載せるので、是非、みんさんもいろいろとご自身で深ぼってみてください。

↓スーパーノヴァ実験をかわかりやすくまとめたブログその1↓

Do High-Fat, Low-Carb Diets Boost Endurance?
After causing a great deal of controversy with their original findings ...
※コメント※
スポーツジャーナリストのアレックス・ハッチンソン(参考にした書籍の著者)の言葉が多く引用されている?けどわかりやすくまとめられた良質なブログ。

↓スーパーノヴァ実験をわかりやすくまとめたブログその2↓

Low carb, high fat keto for running performance.
Low-carb high-fat ketogenic diets and endurance performance. Nutrition for training for runners and obstacle course racers. Learn to train smart with exercise s...
※コメント※
スポーツ科学のPhD(博士号)を持っている方が書かれたこちらもわかりやすくまとめられているブログ。かなり読みやすくわかりやすい!というかこの人の経歴もなかなかすごい。関係ありませんが、このレベルのランニングコーチはどんなプログラムを提供してくれるのか?めっちゃ気になる。
※コメント※
スポーツに関係なく目から鱗。再現性のある数値ベースで「なぜ」を明らかにしてくれる名著。宗田医師の発見(母体や胎児でのケトアシドーシス状態)はもっと広がっても良いレベル。特にダイエットや医療の専門家を自称するなら必読。
※コメント※
スポーツに関係なく目から鱗第二弾。現在は誰もが知る糖質制限ダイエット。この手法の黎明期にヒットしたベストセラー。読み物としても面白い!「健康とは何なのか?」に深い洞察をくれる読んで損はないおすすめの名著。

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