【ランニングフォームの罠】タイミングの科学 脳は動作をどうコントロールするか【ミラーニューロン】

さまざまなもの

みなさんどうも、こんにちは!

僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。

僕が数多くのブログや動画を投稿している中で「あえて」やっていないことがあります。

それがランニングの具体的なノウハウ指導です。たとえば、着地の際は足をこう動かせ、腕はこのように引けなどです。

なぜ僕がこのような動画を投稿しないのか?
その真相を今からお伝えします。

【学術選書】タイミングの科学 脳は動作をどうコントロールするか

ここにある一冊の本。

タイミングの科学 脳は動作をどうコントロールするか

京都大学から出ている学術選書シリーズ。つまり大学生向けのいわゆる学術書の類。

この本の中に僕がなぜランニングの具体的なノウハウ指導の情報を発信していないかの理由が隠されています。

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では、その理由です。

出来ないから。僕にはそのようなアドバイスが出来ないからです。

と、聞くといろいろツッコミが入ると思うので、なぜ僕がランニングの具体的なノウハウ指導が出来ないのか説明します。

動作観察、観察学習が苦手である

という厳然たる事実が存在するからです。

みんさんは動きを見ただけで、その人の動きを模倣・まねることが出来るでしょうか?

これがいわゆる動作観察、観察学習と呼ばれるもので、このスキルが高い人と低い人が存在します。

なぜこのような能力差が生まれるのか?

この本「タイミングの科学 脳は動作をどうコントロールするか」ではこう指摘されています。

自分が精通した動作を行う他者を観察すると、知覚―運動系は自分が動かそうと思わなくとも活動する。さらに、動作を観察中に知覚―運動系が活動する程度は観察している動作の習熟度に強く結びついているのである(タイミングの科学 脳は動作をどうコントロールするかp26)

これはつまり、見て学ぶという学習スキル自体がその学びたい動作にある程度慣れている、習熟している必要があるのです。

さらに深ぼると、この見て学ぶという観察学習は運動のパターンだけでなく、力加減やタイミングなども獲得できるとのこと。つまり、動きそのものより、もっと大枠の動きの流れのようなものも習得可能であり、2016年のEmily S. CrossとBeatriz Calvo-Merinoらの研究によるとカラダを動かして練習することとこの観察学習を併用するとそれぞれの練習と学習だけ行うより大きな効果をもたらすことも発表されています。

『The impact of action expertise on shared representations』
APA PsycNet
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↓著者たちの研究一覧↓

Emily S. Cross

Emily S. Cross
‪ETH Zurich‬ - ‪‪引用: 6,775 件‬‬ - ‪Cognitive & Social Neuroscience‬ - ‪Social Robotics‬ - ‪Experience-Dependent Plasticity‬ - ‪Human-Robot Interaction‬ - ‪Neuroa...

Beatriz Calvo-Merino

Beatriz Calvo-Merino
‪City, University of London‬ - ‪‪引用: 7,008 件‬‬ - ‪Cognitive Neuroscience‬
※コメント※ふたりとも認知科学的視点でダンス(ダンサー)を主に研究しているようです。Emily S. Crossは認知神経科学×ロボット工学。Beatriz Calvo-Merinoはバリバリの認知神経科学。個人的には後者の研究者の研究が面白そうだと思いました。

よって、動きを観察することはとても良い練習となるのです。あなたがそのスポーツに習熟していれば。

ということからも、よく言われる寿司職人が師匠から見て学ぶという観察学習も実際に握ったことのない初心者がいくら動作を見ても学べない可能性がある。

ではどうやって習熟度を図るか。

ここが肝になってくるのですが、それこそ僕は「論より証拠」だと思っています。つまり、そのスポーツで実績を残しているかどうか?

幼少期から青春をその競技にかけた人間が抜きんでているのも、習熟度という観点から差別化できる。特に結果を残している選手はそういった意味で観察学習が上手い可能性が高い。

頭でっかち、知識だけを持っていて動作の習熟が未熟なら動きの本質を捉えられない。

知識だけがあり、口が上手ければそれらしいことは言えると思います。僕もおそらくそれらしいことは言えます。が、しかし、それは単なる張りぼて、ある意味他者を欺く、自分を欺くことであることも本気で競技と向かい合ったからこそよく解っている。

なぜなら、僕はそんなにカラダを上手くコントロールできないから。

僕は確かにトライアスロンの日本代表になりましたが、それは「ド素人が目指すトライアスロン日本代表のなり方」で詳しく解説したように実力を補うための戦略を駆使してつかみ取った部分も大きい。また、そこまで速くないからこそ3種目あり、強豪が分散するトライアスロンで世界を目指したのです。もちろんこれも凡人がスポーツで世界を目指すひとつの戦略の上での判断。

よって、たかが数年死ぬ気で努力した程度、しかもある程度の年齢になってから始めたたため、動作の習熟度がまだまだ未熟な部分が多い。実際に運動模倣が苦手なのは実感としてあります。

これが何を隠そう運動習熟度が低いことの現れです。

よって、僕は出来ないのです。

ランニングの具体的なノウハウ指導が。観察学習が苦手であるという事実において。

というのが、僕がカラダの動かし方を具体的に教えていない、いや教えられない理由です。どんなロジックや理論を持っても埋められないギャップは存在しますし、そのギャップをないように扱うことも僕はしたくありません。言葉を換えれば、青春をその競技に費やした人に対する「尊敬」でもあります。

という意味合いでも実績がある、昔に結果を出した専門家の話は耳を傾ける価値があると僕は思います。
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このように埋められない経験から目をそらすことを僕はしたくない。埋められないがために努力せずにそれらしい知識を持って、それらしいこと、動きの本質を理解せずに

ここをこうしろ!ここはこれに気をつけろ!

と僕は言いたくなのです。ランニングに対する誠実さというのはそういうものだと僕は考えています。

もちろんこれは僕の一意見なので、押し付けるつもりは一切ありません。

というように僕はそのような知ったかぶりをしたくないため、日々試行錯誤していますし、今でも具体的なノウハウの本質は正直、全然わかりません

【まとめ】ランニングフォーム習得が上手い人と下手な人の違い

話がよくわからないところに飛びましたが、結局何が言いたかったのかというと、観察学習は運動のスキルを身につけるには格好の方法でもありますが、そこには条件も存在しており、その運動にどれくらい慣れているのか?という習熟度が実は関係している。

効果的な観察学習をしようと思えば、カラダを動かして学んだベースが必要であるということです。特に、その習得したいと思う動作に特化して。

【専門家の観察眼のひみつに迫った研究(要旨のみ)】

Experts see it all: configural effects in action observation『専門家は全て見通す(全て理解す):動作観察における構成的効果』

Experts see it all: configural effects in action observation - Psychological Research
Biological motion perception is influenced by observers’ familiarity with the observed action. Here, we used classical dance as a means to investigate how visua...
※コメント※
クラシックダンサー(バレエ)を対象とした研究。タイトルが良い!専門家の観察眼は運動の慣れが必要っぽい。この研究も本書で言及されています!この論文の要旨を読みながらチャンキング(チャンク化)の妙みたいなものを僕はそこはかとなく感じました。なぜならconfigural(配置や構造を説明する形容詞)ってチャンク化的な意味だと僕は勝手に解釈したため。間違っていたらすみません。ランニングフォーム習得に必須のチャンキング(チャンク化)はまた近日公開する動画で解説します。お楽しみに!
↓チャンキング(チャンク化)は以下でも少し触れています↓
アスリートは歳を取るほど強くなる、パフォーマンスのピークに関する最新科学

もしあなたが努力を積んだ結果、ケガをしてしまいトレーニングが出来ずに焦っている場合は観察学習を取り入れてみてください。実際の運動しているときと同じ脳の部位が活性化し、疑似的なトレーニングになる可能性が指摘されています。特にランニングフォームの改善や修正のとっかかりになるかも!?

これもまっとうな努力の方向性です。

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【室伏広治選手の父】ミラーニューロンとアクションシミュレーション

その証拠に東京医科歯科大学の教授であった室伏広治さんの書籍「室伏式世界最高の疲労回復」にこのようなエピソードが載っています。

それが室伏広治さんの父親の話です。

室伏広治さんに多大なる影響を与えた彼の父親がスランプから脱する方法として、練習量をそれまでの10分の1程度に抑え、そのほかの時間を映像分析に充て、スランプから脱出したという話。

※コメント※
室伏広治選手に多大な影響を与えた父親の言葉「どんなときにも客観的に自分自身を見つめることを忘れるな」。観察学習の極意のひとつはまさしくここにあると僕は考えています。僕は真似できませんが示唆深いエピソード。

これも観察学習という切り口からその「なぜ」を紐解けるエピソードだとも思います。

みんさんは「ミラーニューロン」という言葉を聞いたことはあるでしょうか?

結構、メジャーな言葉になって来た感がある脳科学でよく専門家が使う言葉が

「ミラーニューロン」「ミラーニューロンシステム」

このミラーニューロンシステムとは簡単に言えば、相手の動きを見ると自分もその動作を行っているように同じ脳の部位が活動する仕組みのこと。鏡、ミラーのように相手の動きを自分の頭の中でトレースする、疑似的に相手の動きを追体験しているような感じ。

という超面白いシステムが全員の脳内に存在していることから、観察学習が可能となるひとつの理由となっています。現在では、これらの機能が高じて、結果、ミラーニューロンが活性化する脳の部位が発達して発話に繋がる、運動性言語野の進化のもとになったとも言われているくらい人間にとって重要なのがこのミラーニューロンシステムなのです。

また、このミラーニューロンシステムがあるからこそ、協働、人間に欠かせないチームプレーも可能になったりもしているようです。

そしてこのミラーニューロンを研究している中でわかったこんな面白い事実。

それがサルを対象にしたこんな実験。

サルにピーナッツの皮をむいてもらいます。このときの脳の様子を観察。

次にサルの目の前で他人が皮をむくようすを観察してもらいます。すると姿が見え、音が聞こえるのでミラーニューロンシステムが起動します。

ここまでは「そうだよな」という感じです。

面白いのがここからです。

次に研究者が行ったことは視覚だけ、聴覚だけという限定した環境で脳内でミラーニューロンが活動するのか?

それを調べたのです。

結果、サルに目隠しをしてピーナッツをむく音だけを聞かせた場合、なんとミラーニューロンが活性化。また音を遮断して視覚情報だけでもミラーニューロンが活性化したのです。

そしてこれは人間にも当てはまります。

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このようにミラーニューロンは「超」がつく高性能。

これを使って我々は動作を見て聞いて学習することができる。

というわけでは実はない!

結構、脳科学を使った運動の専門家を自称している人でこのミラーニューロンを用いて観察学習の有用性を説明する人がいますが、そんなものごとは簡単ではない。

人間が行う動作やランニングなどのスポーツ全般はより複雑。目で見て、音を聞いただけで覚えるという秘技、観察学習。ここには重要な前提が存在します。

それが「アクション・シミュレーション」と呼ばれる一種の認知機能です。

このアクション・シミュレーションとは自分の中にある運動プログラムに基づいてはじき出される一種の予測行動のようなもの。

動きの先を読むことができるのは、実はこのアクション・シミュレーションのおかげ。

といきなり聞き慣れない言葉、「運動プログラム」という難しい言葉が出てきましたが、この運動プログラム、英語でmotor programと呼ばれるものこそ、「からだで覚える」と呼ばれる記憶の正体です。

この運動プログラム、motor programをざっくりと説明すれば、こんな感じ。

ゴルフのスイングを例にとると、打つスピードや強さといったパラメータの設定みたいなもの。ランニングで言うと、足のさばきやリズム、着地の強さのようなそれぞれの設定。

より厳密な教科書的な言葉ではこう。

運動の時間構造の記憶に基づく概念

これが運動プログラム。

タイミングや動作の「間」に関係しているのが運動プログラムなのです。

この運動プログラムはミラーニューロン内に記憶される、蓄えられていることが実験によって判明しています。つまり、この運動プログラムの精度みたいなものが観察学習ではカギとなってくる。なぜなら、ミラーニューロンシステムはこの運動の設定みたいなプログラムを参照してカラダを動かしているから。

つまり、自分自身が他者の行う動作に類似した運動プログラムをもっていなければ、他者の動作を予測したり、学習することがそもそも困難。冒頭で話した寿司職人の修行の話はこれで説明できます。やったことのない動作を見て学べるわけがない。なぜなら参照できるプログラムがないから。

幅広く言えば、テレビ観戦でスポーツを楽しめるのは運動プログラムをもとにしたアクション・シミュレーションのおかげ。

実際に競技をやっていた人は選手の動きを無意識的に予測できるため、没入できるのかもしれません。

これが運動プログラムをベースとしたミラーニューロンのなせる技。

ということから、動作が未熟というのはズバリ、運動プログラムが上手く構築されていないとも言えるのです。だから僕は、人に具体的なノウハウを教えることが出来ない。たとえば、室伏広治さんの父親が自分や他者の動作を観察して得られる知見を10とすると、おそらく僕は同じ努力をしてもそこから学び取ることができる知見は2や3くらい。なぜなら努力量が足りないことはもちろん、そもそも運動プログラムの構築能力が劣っているかもしれないから。

よって、この運動プログラム。これが僕自身がスポーツが苦手である最大の理由であると仮説を立て、ザックリ言うと運動プログラムにアプローチするのを諦め、自分の持っている長所をひたすら伸ばすスポーツ科学トレーニングにフルベットしたという経緯があります。

おかげで独力で日本代表になれました。

トライアスロン海外遠征!世界選手権レースブログ(ヨーロッパ)

その成功の秘訣こそ、僕が良く言う「再現性」です。僕にとって、観察学習は再現性のないトレーニング、ある意味無駄な努力の方向性であるという結果を導いたから。もちろんこれは僕の文脈の中でトレーニングを解釈した結果の話です。あなたにとって観察学習がベストなトレーニングである可能性ももちろんあります。

室伏広治選手の父親のように。

というように観察学習はかなり複雑な中で遂行できるテクニックでもあり、トップアスリートや運動能力の高い人はこの能力によって、たとえ自分が動かなくても相手の動きを自分のものにできる可能性がある。もしくは相手の動きの先読みが出来る。

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【ランニング専門家の矛盾】スポーツにおける悪い癖や汚いフォームの本質

また、スポーツにおいて「悪い癖」という言葉。ランニングでは「汚いフォーム」のようなもの。この原因となるのが、運動プログラムに関連するタイミングの取り方、専門用語で相対的タイミングと呼ばれる動作間の「間」のこと。

そしてこの相対的タイミングと呼ばれる動きの「間」は強固に保持されるため、我々は悪い癖やランニングフォームの改善が難しいのです。

この話からいわゆる「科学的トレーニング」という謳い文句で解剖学や運動学の知見から情報を発信しているスポーツの専門家のある決定的な矛盾点が浮かび上がってくるのですが、その辺りは波風を立てたくないため

具体的にどういうこと?

と感じた人は僕の書いた「下剋上ランニング!」の第2章「どうすれば楽に速く走れるのか?」をお読みください。

ここでこのタブーにガッツリ切り込んでいます。

ちなみにここで僕が指摘しているのは、あくまで「科学的」という言葉で包んだ専門家の話です。ランニング界隈ではなくスポーツ界隈全体の話ですので、誰かを批判しているというものではなく科学的トレーニングを謳う業界全体に対して僕が思っていることなので、そこだけは誤解のないようにしてください。


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というようにトレーニングにはなんと実際にカラダを動かす以外の観察学習という方法もあり、その努力が機能する人もいたり、逆に僕のように機能しない人もいる。またミラーニューロンや運動プログラムのようなよくわからない複雑な機能の上にランニングなどの運動が成り立っているというそのダイナミズムを知って頂ければ幸いです。

今回、参考にした書籍は「超」おすすめです。少しでも気になった方は是非、ご覧ください。

※コメント※
京都大学学術出版会の学術選書シリーズ。内容は抜群に面白い!一般的な学術書に比べ読みやすく初学者向けのイメージ(でも、あくまで学部生向けのためやや難しいかも)。運動制御の奥深さが伝わり、ランニングなどスポーツ全般の動作のある意味「真の姿」が浮彫になります。特に解剖学・運動学に特化して勉強しているスポーツの専門家にとってかなり示唆に富む内容だと思います。

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