【月間たった80kmで2時間46分】クロストレーニングのメリット・デメリット

書籍紹介

みなさんどうも、こんにちは!

僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。

きついトレーニングを何時間も重ねたわりに、結果が出ない。そんな選手を見て、こうつぶやくアスリートがいまいた。

ただ何時間も猛練習をして、自分たちを極度の疲労に追い込めばいいってものじゃない。

この言葉。

オリンピックの金メダリストである、マッズ・ラスムッセンが日本のチームに招かれたときに口にした言葉です。

日本に深く根付いたマラソンの価値観。それが距離信仰。

だからこそ、本日紹介する本はその名も『毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる!月間たった80kmで2時間46分!超効率的トレーニング法』です。

いきなり「月間たった80kmで2時間46分!超効率的トレーニング法」と言われても正直、かなり怪しいと思いませんか??

しかし、なんとこの本の著者。

吉岡利貢(よしおかとしつぐ)さんは筑波大学大学院で博士号をとり、母校である筑波大学でマラソンを研究している研究者。さらにランニング学会常務理事のひとりでもあり、アカデミックに身を置く人間なのです。

毎日長い距離を走らなくてもマラソンは速くなる!

そんなマラソン研究者である吉岡さんの意見。

私は、選手と違ってランニングに割ける時間が少ない市民ランナーが、ストレスに強くなるために無理に長時間の練習をする必要はないと考えています。

そして、さらにこう続けます。

インターバルなどで最大酸素摂取量や無酸素性代謝閾値が上がっていれば、LSDをしなくても長時間カラダを動かす体力は養われています。

良くいろいろな人が指摘するLSDの常識。その筆頭が毛細血管の発達です。

しかし吉岡さんの説明によれば、毛細血管の発達には、血流の一時的な不足や血流の大幅な増減による血管へのメカニカルストレス(機械的な刺激)が必要とのこと。

その点、LSDは強度が低すぎるので、毛細血管の発達を促すような血管へのメカニカルストレスは乏しいと鋭い指摘をしています。

LSDを広めた名コーチ、佐々木功さんはLSDとともに、坂道を走るヒルトレーニングのような高強度の練習を組み合わせる提案をしています。

だからこそ、以下でも指摘していますが、LSDで速くなることはなく、走力アップの要となるのは、メリハリのある練習であり、最も重要なのが高強度トレーニングとなるポイント練習なのです。

【なぜ??】スロージョギングだけでフルマラソン2時間40分切り(サブ40)を達成出来たのか

では、いかに質の高いポイント練習をするか?しかし、それが出来ないからこそみんな悩む。

そんな吉岡さんの結論。

 

それは、ずばり、自転車を使ったクロストレーニングです。

これこそ、月間たった80km程度の走行距離で2時間46分を達成出来た理由であり、超効率的トレーニング方法の核心です。

えっ、クロストレーニング?いったい何それ?

クロストレーニング(ランニング×自転車)の効果とは?

クロストレーニングとは「専門とするスポーツの競技力を向上させるために、他のスポーツ、あるいはトレーニングを行う」ことです。

つまり、吉岡さんが提案するクロストレーニングとは、

自転車でのトレーニングを組み合わせて、月間走行距離を減らしながら走力を伸ばすという考え方

です。

そもそも、本当に自転車を使ったクロストレーニングは効果的なのでしょうか?

吉岡さんはちゃんとしたエビデンスも提示してくれています。

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たとえば、

1984年、アメリカオハイオ大学のマイクセルらは、長距離ランナーに40分間の全力走と自転車によるインターバルトレーニングを行ってもらいました。その結果、たった6週間で10km走のタイムが81秒短縮した。

と報告しています。

つまり、これは自転車トレーニングにより、ランニングのパフォーマンスが向上した証拠です。

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その他の研究としては、

1993年、アメリカカリフォルニア州立大学のムトンらが行った実験があります。ムトンらは、被験者にランニングと自転車を組み合わせたクロストレーニングを5週間行ってもらいました。
その結果、ランニングのみのトレーニングをした対照群と比較して、最大酸素摂取量と5km走のタイムが、同等の向上を見せた。

と報告しています。

これはつまり、自転車トレーニングにより、その分だけランニングのトレーニング量を減らしても、パフォーマンスが維持されることを示しています。

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そんなランナーに効果的なクロストレーニング。

では、思い出して下さい。この本のタイトルにある副題を。

それは「月間たった80kmで2時間46分!超効率的トレーニング法」です。

そう、この目を引くフレーズ、「月間たった80kmで2時間46分」

この話こそ、実は吉岡さん自身の経験談なのです。

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このタイトルからもわかるように吉岡さんは、自転車を取り入れたクロストレーニングにより、週わずか18kmのランニングで体力がアップし、パフォーマンスを落とすことなく、フルマラソンを2時間46分38秒というタイムで完走しました。

これを聞くと思わず「すごい」と唸りますが、当時吉岡さんは30歳、陸上競技歴は18年であり、競技を引退してからの自己ベストも2時間43分18秒。

私たちが思い描く普通の市民ランナーでないことがわります。

よって、参考になるのかと言われると「う~ん」という感じなので、より再現性が高いであろうBさんの話をご紹介します。

クロストレーニングで速くなった市民ランナーの例(サブ4からサブ3.5)

Bさんはランニング歴5年、39歳の医者です。Bさんがクロストレーニングを始めたときの走力はだいたいフルマラソンで4時間を切る程度。

そしてクロストレーニングを導入してから、9ヵ月後には3時間26分11秒、1年後には3時間12分13秒にまで短縮することに成功しました。

この間にBさんが実際に走った月間走行距離は平均約114km、週平均で25.7kmです。

それでは、なぜ月間走行距離100km少しでそこまでの走力アップが可能となったのか?

その秘密は、自転車を使った週1~2回の短時間のインターバルトレーニングです。

具体的な内容は90秒間全力で漕いだら、90秒は軽く流して休むというサイクルを5セット。さらに慣れてきた3ヵ月後は、30秒間の全力ペダリングを4分間の休息をはさんで5セット繰り返すスプリント・インターバルトレーニングを行いました。

この「スプリント・インターバル・トレーニング(通称SIT)」とは、きわめて短時間の全力運動を、長めの休憩をはさんで行うもの。

2008年に発表された研究では、

週5回、無酸素性代謝閾値である「ややきつい」トレーニング強度で40分~60分グループと週3回、30秒全力で漕ぐトレーニングを4分半の休憩を入れて4回~6回反復したスプリント・インターバル・トレーニンググループを比べた結果、どちらも同程度の最大酸素摂取量の向上が起こる

とわかりました。

前者のグループの総運動時間は4時間半、後者のグループは正味10分程度

それなのに得られた効果は同程度であり、スプリント・インターバル・トレーニングは非常に効率的だと判明したのです。

実際にBさんは自転車トレーニングの効果としてこう述べています。

走っているときに苦しくなってからもスピードを維持できる。

仮に3時間半切りを狙うとしたら、練習量を月300kmくらいまで増やせたでしょうから、ランニング障害は避けられなかったかもしれないし、それだけの練習時間を確保するための肉体的、精神的なストレスは大きかったと思います。少々大袈裟ですが、自転車は私の人生に変化をもたらすほどのインパクトがありました。

クロストレーニングのデメリット

また、Bさんはクロストレーニングのデメリットについてもこのように指摘しています。

正しい姿勢と漕ぎ方、メニューづくりが難しいですね。走るトレーニングとのバランスの取り方、組み合わせ方をよく考えないと速くも強くもならないと思います。

 

では、自転車を使ったクロストレーニングで肝となる正しい姿勢や漕ぎ方とはいったい何なのか?

正しいメニューづくりやランニングとの正しい組み合わせとはいったいどんなものなのでしょうか?

クロストレーニングの正しいやり方

クロストレーニングにおいて自転車の正しい姿勢や漕ぎ方とはつまり、ハムストリングスに効果的に刺激を入れる前傾姿勢と足首を固定して、ややサドルの後ろ側に乗る乗車姿勢です。

自転車を使ったトレーニングにより得られるメリット。それが大腿後ろ側のハムストリングスの強化です。

ハムストリングスは自転車でもランニングでも重要な役割を担います。

筋力は、基本的に筋肉の断面積に比例しますが、吉岡さん自身の研究から、ハムストリングスの断面積が広いほど、長距離走のパフォーマンスが高いことがわかっています。

この検証から、「自転車トレーニングがランニングのパフォーマンスの向上に直接かかわる可能性が高い」と吉岡さんは指摘します。

ただし、適当に自転車を漕いでもハムストリングスに適切な刺激は入りません。

注意したいのは乗車姿勢です。

ハムストリングスを効率的に使うためには前傾姿勢が必須なのです。

だからこそ、スポーツバイクやジムなどにあるフィットネスバイクを使用するには、サドルを高めに、つねに前傾姿勢を取るように意識してください。

また足首を固定して、ややサドルの後ろに乗ることでハムストリングスに適切な刺激が入ります。

さらに自転車を速い回転で漕ぐことでランニングのピッチも速まり、結果としてランニングエコノミーが改善される可能性も吉岡さんは指摘しています。

トライアスロンに関する論文では、自転車からランニングに移るときに、あえて自転車のギアを軽くして意図的にペダルの回転数を上げることで、パフォーマンスが向上する可能性が示唆されました。

この論文では、

回転数を上げるグループと上げないグループを比較していて、回転数を上げたグループのほうがランニングのピッチが速くなり、タイムも速くなる

と報告されています。

このように自転車トレーニングによる股関節のハムストリングスの強化や様々な筋肉の神経系を刺激する速い回転のペダリングはランニングやマラソンに有効に作用する可能性が高いのです。

ちなみに自転車の回転数ですが、最低でも1分間に80回転、できれば90回転以上のペダリングが効果的とのことです。

なるほど!正しい姿勢や漕ぎ方がわかった!

でも、

正しいメニューづくりってどうしたらいいの?

そう思うと思います。

ケガ以外の距離信仰の最大の問題点。それは運動強度の低下です。

マラソンのトレーニングの主眼となるのは、筋機能を鍛えて無酸素性代謝閾値を上げること。それには「ややきつい」に相当するマラソンペースを超えた「きつい」レベルでのトレーニングが求められます。

しかし、走行距離を増やすとどうしてもダメージが蓄積し、強度の高い、言い換えれば質の高い練習が出来づらくなります。その結果、ランニングエコノミーも低下する傾向があると吉岡さんは指摘します。

だからこそ、ダメージや疲労を抜くという理由で走行距離を減らす目的もそうですが、自転車での高強度のトレーにニングを組み込むと、故障を防ぎながら、タイムを上げることも可能となるのです。

つまり、だらだら自転車を漕いでも走力向上にはあまり意味がないということです。

クロストレーニングのメリット

クロストレーニングでの自転車トレーニングで高められるのは、ハムストリングスの強化もそうですが、最大酸素摂取量(VO2MAX)と無酸素性代謝閾値(乳酸性作業閾値)です。

だからこそ、正しいメニューとはBさんのように週に1~2回のスプリントインターバルトレーニングを行ったり、高回転のペダリングで自転車を漕ぐことなのです。

これを基本的にオフシーズンに行い、シーズンが近づくにつれて、ランニングの頻度を増やしていくことがクロストレーニングでの正しい組み合わせなのです。

ここまで聞くと、

なんとなく難しそう

自転車とかフィットネスバイクなんてないしな~

など、正直あまり乗る気が出ないランナーも多いかと思います。

だからこそ、さいごにモチベーションが上がる話をして終わりたいと思います。

それは、マラソン(ランニング)と自転車を掛け合わすと日本代表になれる可能性が高いという話です。

【クロストレーニングのその先】デュアスロンとは?

いきなり日本代表などと言うと、まったく意味がわからないと思うので、詳しく説明します。

みなさんは「デュアスロン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?

きっと初耳だと思います。

なんとこの世にはランニングと自転車競技を組み合わせた競技、その名もデュアスロンという競技が存在します。

勝負の鉄則
それは自分が強みを持っている分野で、より競争の激しくないところで戦うこと。

この言葉は陸上競技男子400mハードル、ふたつの世界選手権で銅メダルを獲得した為末大選手の言葉です。

メンタルを鍛えるため「諦める力」を読み解いてみた

自分が強みを持っている分野で、より競争の激しくないところで戦う

競技だけでなく、仕事や人生、YOUTUBEにも通じる考え方。

マイナーで競技人口が少ないデュアスロンという競技。

マラソンでは常に自分より速い人が存在します。しかし、自分の強みを活かして、より競争の激しくない舞台で戦えば、誰も見たことのない景色を見ることが出来るかもしれません。

想像してみてください。自分が日本代表として日の丸を背負って、世界でレースをする姿を。

まるで夢物語のように聞こえるかもしれません。

しかし、それは知識を使い戦略と戦術を駆使すれば、夢物語ではなく実現可能な目標まで落とし込めるのです。

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ちなみに僕は足がそこまで速くなかったので、水泳を必死に練習して、ランナーが苦手とするトライアスロンという分野でアマチュアの日本代表になり海外のレース、憧れの舞台である世界選手権に出場しました。

トライアスロン初心者だった元帰宅部がトライアスロン日本代表へ

そして、もちろんデュアスロンも毎年世界選手権が行われており、何歳であってもサブ3を目指せる気持ちのあるランナーであれば日本代表になれる可能性はあります。

2021世界/アジアエイジグループ・スタンダードデュアスロン選手権 日本代表出場基準 | ニュース / News | JTU Web Magazine -公益社団法人日本トライアスロン連合(JTU)
クロストレーニングはそういった意味でも、効率的なトレーニングとしてだけでなく、夢を見させてくれるトレーニングだと思います。

今回はあくまで自分の言葉で簡単にまとめただけなので、少しでも気になった方は本書をお取り下さい。

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