【ランニングフォームの答え】地面を蹴って走ってはいけない本当の理由【マラソンとふくらはぎ】

書籍紹介

みなさんどうも、こんにちは!

僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。

マラソンなどのランニングにおいてやってはいけないこと。そのひとつが地面を蹴ることです。

だからこそ、力んでいるときに足を置け!という表現が使われたりします。

地面を足で蹴るのではなく地面に足を置く。これがランニングで意識する重要なポイント。でも、この地面を蹴るという行為。一見、推進力を生み出し速く走れるような気がします。

しかし、地面を蹴る、つまりふくらはぎの筋肉で地面をひっかくように走ると、小さな筋肉であるふくらはぎの筋肉が張ってきたり、結果、長時間走るのには不利に働いてしまう。

マラソンなど長距離を楽に長く走るためには、大臀筋などの大きな筋肉や股関節などの大きな関節を主体とした運動がベスト。

これはいろいろな方が発信している情報だと思います。

そしてここからさらに一歩踏み込みたいと思います。

ここにとても興味深い研究があります。

それがデンマークのコペンハーゲン大学のその名もコペンハーゲン筋肉研究センターが実施したランニングエコノミーに関する研究です。

対象となったのはヨーロッパのエリートランナーとケニアのエリートランナー。さらにはデンマークの少年とケニアの少年も対象とした研究です。

この研究を簡単に言えば、双方の走り方やランニングに関する能力を比較してどこがどう違うのか、なぜ違うのかを徹底的に調査した研究です。

そしてわかったのが、ほとんど差がないということ。

なんとヨーロッパのエリートランナーとケニアのエリートランナーでの筋線維の比率に差はなく、さらに最大酸素摂取量も特筆すべき差が確認されませんでした。

これは少年同士を比べた結果も同様でした。

ある一点を除いて。

この本、「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学」の言葉を借りると「最もユニークな発見」。果たしてその最もユニークな発見とはどんな発見なのか?

【ジーンクエスト】スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学【ランニングDNAとは?】

ふくらはぎの太さとランニングフォームの関係

最もユニークな発見。それが脚回りの寸法です。

そう、つまりふくらはぎの太さ。ふくらはぎの筋肉の容積の違いだったのです。

なぜこの発見がユニークなのか?

簡単です。ふくらはぎが太ければ太いほど、ランニングエコノミーが低下する可能性があるからです。

原理は至ってシンプル。脚は振り子のようなもので、振り子の端が重ければ重いほど、振り子を振るのに多くのエネルギーを必要とするからです。これは実際のランニングでの動作研究からも証明されています。

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その研究はこんな感じです。

ランナーの腰に4kgの重りを取り付けて走ってもらいます。すると重りがないときと同じペースで走るには、4%多くのエネルギーを必要としました。ところが、ランナーの両足首にそれぞれ2kgの重りを取り付けたところ、重りがないときと同じペースで走るには、24%も多くのエネルギーを消費したのです。

4%のエネルギー消費量と24%のエネルギー消費量

取り付けられた重りの重さの合計はまったく変わらなかったのにも関わらず、です。

手足の端のほうに位置する重さは、専門用語で「遠位重量」と呼ばれ、長距離ランナーはこれが少なければ少ないほど好ましいのです。

だからこそ、「スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学」ではこう指摘されています。

すなわち、あなたのふくらはぎや足首が太ければ、ニューヨークシティマラソンでは勝てないのだ

さらに、足首にわずか50gの重りを取り付けただけでも、ランニング時の酸素消費量が1%増えることが、別の研究チームによって確認されています。

またデンマーク人ランナーとケニア人ランナーを比較するとケニア人ランナーの方が太ももが約500g軽いことが研究者によって明らかにされました。この500gの違いでなんと1kmにつき8%のエネルギーが節約される計算になるとのこと。

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世界でも著名なスポーツ科学者のひとりであるベン・サルチン博士は、同じトピックの研究において

この関係は、全体値で表された下腿の太さ(ふくらはぎの太さ)がランニングエコノミーのきわめて重要な要素であることを裏付けていると考えられる

と記しており、同じくコペンハーゲンの研究チームの一員、ヘンリク・ラーセン博士はのちに、長距離走におけるケニア人の優位性について

主因を解明した

と発表したくらいです。

ケニアやエチオピアのランナーは速い。その理由は優れたランニングエコノミーにある。

そのランニングエコノミーを紐解くのに、脚の長さやフォアフット走法などそのフォームがいろいろと考察されている中で、実はふくらはぎの太さ、つまり細いふくらはぎというのがケニア人ランナーの類まれなランニングエコノミーを実現しているのかもしれない。それがこれらの研究から示唆されたのです。

と言うと、なるほどと思うのですが、実際はより混沌としており、

イタリア人研究者・コーチクラウディオ・ベラルデリが「ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・アプライド・フィジオロジー」に発表した研究では、ともに2時間8分台で走るヨーロッパとケニアのマラソン選手が比較され、ランニングエコノミーに焦点が当てられました。

そして、この論文の結論はこうです。

ケニアのマラソンランナーがヨーロッパ人を抑えて優位に立っている理由は、ランニングエコノミーでは説明できない

そう、世界のトップレベルになるともはや最大酸素摂取量やランニングエコノミーなどは人種を超えて似てくるのです。

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ふくらはぎで地面を蹴る走り方は良くない!速くなるランニングフォーム

しかし、このふくらはぎの太さがもたらすランニングエコノミーへの影響は確かなことなので、冒頭で指摘した

ふくらはぎで地面を蹴るような走り方は良くない!

もしこのような地面を蹴るような走り方をすると、本人も意図せずにふくらはぎの筋肉が太くなる。その結果遠位重量の増加に繋がり、余計ランニングエコノミーが低下する、という負のスパイラルが発生する可能性があるのです。

これが地面を蹴らず、足を置く意識が大切というよく言われる金言のあまり誰も指摘しない研究ベースでのランニングフォームの答えです。

足の長さやしなやかさも大切ですが、意外とふくらはぎの太さが長距離のランニングには決定的な要因になるかもしれません。

ちなみに、東京大学の石井直方教授が筋肉の人種差について学術的な研究はあまりないと指摘しているので、このマニアックな分野は未開拓な可能性もあります。

つまり、体型は人種によってことなり、日本人はふくらはぎが太い傾向にあるとどこかで聞いたので、アジア人、特に日本人に特有の特徴があるのかないのか?はたまたあるとすれば、このふくらはぎの太さによるランニングエコノミーの差異は他の人種と比べてどう違うのか?を探っていけばなかなか興味深い研究になるのかもしれません。もしかすると日本人がフルマラソンでより速くなるためのヒントが見つかる可能性も考えられます。

また着地や足さばきなどふきらはぎの太さによるランニングエコノミーの影響が何かしら特異的なランニングフォームと関係している可能性もあるかもしれません。

たとえば、ふくらはぎが細ければ細いほどフォアフット走法を身につけやすくなるのではないか?などの仮説です。

そして、もっとぶっとんだ仮説を立てるとすると、ふくらはぎの太さでその人のタイム等を予測できるかもしれません。特に箱根駅伝の5区や6区などの長いのぼりや長いくだりなどのタイムにダイレクトに反映されるような気がします。

ちなみに先行研究など一切調べていないので、パッと思いついたただの感想に近いアイデアですので悪しからず。

現在、僕が考えるふくらはぎの太さを解決する具体的な方法はこれ!

【ふくらはぎが太いを解決!】どうすればランニング効率を高められるのか?【おすすめランニングアイテムカーフスリーブ】

【最強のマラソン民族】ふくらはぎが細いカレンジン族出身のケニアランナー

そして、この着想のヒントとなったさきほどのコペンハーゲン筋肉研究センターが実施したランニングエコノミーに関する研究。

対象となったのはヨーロッパのエリートランナーとケニアのエリートランナー、そしてこどもたちでした。

この被験者となったケニア人ランナー全員には実はある秘密が隠されています。

それが彼らの出身部族です。その名もカレンジン族

彼らは全員、このカレンジン族という少数部族出身のランナーなのです。

スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学ではこう指摘されています。

トレーニングによって非常に短期間に際立って速い中長距離ランナーとなる者の割合は、ケニアの他のどの部族より、あるいは世界中のどの民族よりもカレンジン族が大幅に高い

さらにこうも指摘するくらいこのカレンジン族は速いのです。

ケニアという言葉に惑わされてはいけない。これらの選手たちは一人残らず、ケニアの少数民族カレンジン族出身だったのだ


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もちろんあの世界最速のランナー エリウド・キプチョゲ選手もカレンジン族です。

ちなみにチップスですが、ここで解説したエチオピア人ランナー。ケネニサ・ベケレ選手やウガンダのトップ選手たちももとをたどっていけば、カレンジン族に由来していたりします。

【エチオピア流㊙マラソントレーニング】ランニング王国を生きる 文化人類学者がエチオピアで走りながら考えたこと【ナイトランニングの方法】

ではなぜ彼ら、カレンジン族だけが頭ひとつとびぬけて速いのか?

おそらく足の速い持久力に特化した人間だけが選択的に配偶者に恵まれた文化的な背景のためだと思われます。

このカレンジン族には牛の略奪という文化が存在しており、持ち帰った牛の数が多いほど優秀な戦士として称えられ、名誉と複数の配偶者を手に入れることができたとのこと。

正直、これだけでカレンジン族の速さを説明するにはクエッションマークがつきそうですが、なんと他の地域でも同じことが確認されています。つまり、同様の牛を略奪する文化を持っている部族に長距離ランナーの才能を持っている人間が多いことが研究によって判明したのです。

この牛の略奪という文化的背景が与えたランニングの才能や能力が世界を席巻するアフリカのマラソンランナーの根底にあるのかもしれません。

良く言われる遺伝か?環境か?

カレンジン族が速いのは持久力に特化した足の速い遺伝子が優位に生き残って継承されたから。しかし、その遺伝も文化という環境のおかげで選択された。

遺伝か?環境か?よく言われるどらも大切という言葉。この言葉の面白いエピソードこそがこのカレンジン族だと僕は感じました。

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そしてもうひとつ。

忘れてはいけない、そしてあまり誰も指摘していない事実が存在します。

それが肺の大きさです。

スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学ではこのように指摘されています。

高地トレーニングより効果的なのは、高地で生まれることだ。高地で生まれ、そこで幼少期を過ごした人間は、海抜ゼロ地帯で生まれ育った人間より平均的に肺が大きい傾向がある。

しかも、この肺が大きくなるという現象はとても興味深く、幼少期に高地で過ごさないと大きくならないのです。つまり、ある程度大人になってから高地で生活しても肺は大きくならない。年齢のスイートスポットが存在するらしいのです。

さらに高地トレーニングでもこのスイートスポットというものがあると指摘されています。この場合のスイートスポットとは、トレーニングの効果を最大化できる。

つまり、赤血球の数が増えはするが、増えすぎはしない高さ。空気は薄いが、薄すぎない高さのことです。

そして、それが1800mから2700mの間とのこと。この標高であれば、人間の身体に生理的な変化を起こすには十分であるが、空気が薄すぎてハードトレーニングに支障をきたすことはない最高のトレーニング環境のようです。

何を隠そう、ケニアのイテンやエチオピアのアディスアベバやベコジなどのトレーニングベースがこのスイートスポットの範囲内なのです。

またこれはあくまで推測ですが、酸素の少ない場所で過ごすには酸素を効率的に活用することが求められます。よって、血液の通り道である血管を広げる一酸化窒素などを上手く利用できる体になっていることも考えられます。

実際にヒマラヤなどの高地に住む人々の血液中には私たちの240倍の一酸化窒素が含まれていることも判明しています。この一酸化窒素によって、標高の高い場所でも息切れが少なく活動できるのです。

このような特殊な状態は後天的に身につけることが難しいような気がします。

このおそるべき一酸化窒素を活用した驚きのランニングテクニックはこちらで生理学的視点に立ってわかりやすく解説していますので、是非、ご覧ください。

【足が速くなる呼吸トレーニングの具体的なやり方】トップアスリートが実践 人生が変わる最高の呼吸法

そのほか、黒人は同じ身長の白人とくらべると重心が3%高いであったり、ケニア人ランナーのアキレス腱は白人と比較して平均で約7cm長かったりという身体的特徴も判明しています。

以上からケニアやエチオピアのランナーが速い理由として考えられるのは、カレンジン族の牛の略奪文化により、選択的に足の速い人間が子孫を残すチャンスが大きかったため。または、高地で生まれ育つことにより、物理的に肺が大きくなったり、一酸化窒素など血液循環に関するメリットを享受できたため。さらにはふくらはぎが細く、重心が高く、アキレス腱が比較的長いというような身体的特徴などが複雑に絡まりあった結果なのかもしれません。

話がだいぶ脱線しましたが、とりあえず、ふくらはぎで地面を蹴る走り方はランニングエコノミーを考えるとあまり好ましくないということだけを理解していただければ幸いです。

詳しく知りたい方はこちらの本。スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学を実際にお読みください。個人的にはスポーツ科学を取り扱った本の中でベストスリーに入る本だと思います。

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