みなさんどうも、こんにちは!
僕は元帰宅部の本気【The VO2 MAX RUN】というYOUTUBEチャンネルでランニング・マラソン情報を発信をしている市民ランナーです。
みなさんは近年、ランニングを含む持久系トレーニングに激震が走ったという事実をご存じでしょうか?
そうなのです。
トレーニング理論自体に激震が走ったのです。
その代表格こそ、この兄弟。
知っている人は「おっ!」となる言わずと知れたこのふたり。
画像引用元:https://www.outsideonline.com/health/training-performance/norwegian-method-jakob-ingebrigtsen/
右に写るサングラスをかけていない男性こそ、現在、中・長距離界での最速ランナーのひとりと謳われるノルウェーのヤコブ・インゲブリクセン選手その人です。
画像引用元:https://www.220triathlon.com/news/kristian-blummenfelt-charges-to-ironman-world-championship-win
または、こちらのアスリート。東京オリンピック男子トライアスロンで金メダルに輝き、この世でトップクラスの苛酷な競技、水泳3.8km、自転車180km、ランニング42.195kmを続けて行うアイアンマンという競技の世界一にも輝き、非公式ではありますが、最も速いタイムも持っているクリスティアン・ブルンメンフェルト選手。
↓【持久力の限界に挑むレース】Pho3nix Sub7Project↓
このインゲブリクセン兄弟とブルンメンフェルト選手。
このふたりに共通するのが、彼らの出身国。
そう、ノルウェーという国。
実は近年、このノルウェーから生まれたその名も「ノルウェーメソッドNorwegian Method」もしくは「ノルウェーモデルNorwegian model」
このノルウェー発祥の持久系トレーニング方法こそが従来の持久系トレーニング理論に激震をもたらせたのです。
というのもこちらのスポーツ科学の名著、「限界は何が決めるのか?持久系アスリートのための耐久力の科学」の著者であり、世界屈指の大学、ケンブリッジ大学で博士号を取得、自身も中・長距離ランナーとしてカナダのナショナルチームに所属していたスポーツジャーナリスト、アレックス・ハッチンソン。
前半に乳酸についての詳しい記述もあるので、ここから基礎知識もゲットできます!特に示唆に富むのが乳酸に関係した「クリティカルパワー(p139参照)」についての知見。興味ある方はおすすめ!
そんな慧眼を持つ彼にこう言わせているのです。
持久系トレーニングの「ノルウェーモデル」として知られる方法論が急速に広まったことに感動を抑えられない
なぜ彼はそこまで感銘を受けたのか?
ということで、今更感がありますが、このノルウェーメソッド、ノルウェーモデルと呼ばれる持久系トレーニングを深ぼっていきたいと思います。
正直、英語の記事や論文の日本語訳は現在のAIなどの力を借りれば、誰でも簡単に行えるので、今回はできるだけ僕の持っている知見をフルに活用しつつ、それが何を意味しているのか?を含めて、表層の文字列だけではないよりディープなところまで行きたいと思います。
もちろん、できるだけわかりやすく説明したつもりです。是非、肩の力を抜いて気軽に聞き流してみてください。
やや長いですが、このブログを最後まで見ると、点と点がひとつの線に繋がり「なるほど、こんな面白いトレーニング方法があるのか!」となり、専門家も語らないトレーニングの本質が知れる。
前半は「ノルウェーメソッド、ノルウェーモデル」とは一体何なのか?をその道のプロの言葉を切り口に、中盤は実際の研究を参考にしつつ知識を深ぼりました。
後半には具体的な練習メニューを提示しながら我々一般ランナーにどのように適用できるのかという話から、全ての知識・知見を一本の線にまとめて壮大なトレーニングの本質に迫っています。
このブログをきっかけにより深ぼりたいと思った方のために一次情報の論文を含め、参考資料は適宜、できるだけ載せておきます。
気になる方は各自そこからご自身で知見を深めてみてください。
ということで温故知新。持久系トレーニングのトレンドを見ていきましょう!
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目次
ノルウェー式トレーニングは車輪の再発明!?
では、僕が尊敬するスポーツジャーナリスト、アレックス・ハッチンソンの先程の発言からこのノルウェー式トレーニング(ノルウェーメソッド、ノルウェーモデル)に切り込んでいきましょう。
彼はこう言っていました。
持久系トレーニングの「ノルウェーモデル」として知られる方法論が急速に広まったことに感動を抑えられない
この前後の文脈にあるのが、実は過去にイグノーベル賞を取ったこともあるこの概念
車輪の再発明
彼の言葉を借りると“The wheel gets reinvented”
既に存在している画期的な発見を一切、知らずにまた発見する
みなさんご存じ、車輪は既に何千年も前から存在しているのに、その存在を知らずに一から車輪を作り上げ、あたかも自分が偉業を成し遂げたと自認するというむなしき徒労をあらわす慣用句。
それが「車輪の再発明」
個人的にはその能力自体はすごいとは思いますが、ある意味時間の無駄。なぜならすでにそのノウハウは存在しているから。
何事に関しても自前のリサーチが大切な最大の理由。
話にもどって、実あえてはぶきましたが、彼の発言の冒頭にはこんな言葉がついているのです。
Still
接続詞的な使い方のStill。このStilの訳し方はこう。「それにもかかわらず」という意味のStill。
つまり、何が言いたいのかと言うと、車輪の再発明にもかかわらず、ノルウェーメソッド・ノルウェーモデルがここまで急速に広まったことに感動に近い驚きを隠せない。
つまり、この新しい流行である「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」はなんとケンブリッジで博士号を取ったインテリランナーに言わせれば「車輪の再発明」であるということ。
ここがこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」を深ぼれるひとつの切り口であり、キーワードでもあります。
車輪の再発明
流行は繰り返す。
ファッションなどもそうですが、トレーニングにも昔流行ったものが再流行するという一般的な流れが見て取れるという至極当たり前の現象。
ちなみにこのようなことを研究する学問分野も存在し、それこそが「社会学・社会科学」と呼ばれています。
このような社会学的視点でトレーニングを切り取るのも一味違うトレーニングの見方が出来るため個人的には好きなフレームワーク・問題への取り組み方のひとつだと思います。
やや話が脱線しましたが、なんと最近、急に人気が出たトレーニングの流行であるヤコブ・インゲブリクトセン選手をはじめとする「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」
これは、別に目新しいものでも何でもないという事実。
おそらくこのことをダイレクトに指摘している日本の専門家は僕が調べた中でほぼほぼいなかったので、まずはこの知見を押さえておきましょう。
↓ノルウェー式トレーニングに言及しているわかりやすいブログ↓
様々な情報の中でもピカイチ!実際の参考資料等も充実、ここから知識を深ぼればOK的なブログ。やはり素晴らしいスポーツジャーナリスト!ここで「車輪の再発明」の知見をゲットできます(具体的な練習メニューも)
↓【これでOK】ド素人でも英語の論文を簡単に読める裏技↓
↓低強度トレーニング方法「マフェトン理論」とは↓
という面白い知見は実はこちらのあるトレーニング理論を扱った動画で視聴者さんが実際にコメントしてくれたことでもあるのです。
この動画で取り扱ったあるトレーニング理論、それこそ「マフェトン理論」と呼ばれる方法論。
このマフェトン理論と「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」は似ているのではないかと?
そして、その指摘はズバリ、核心をついていたのです。
【練習メニューの具体例】ノルウェー式トレーニングと乳酸値
では、いったい「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」とは具体的にどんなトレーニング理論・トレーニング方法なのでしょうか?
ここを見ていきましょう。
まずは具体的なメニューを先に提示します。が、ここはサラッと聞き流してOK。
では行きます。
火曜日の夕方:3.5mmol/Lの運動強度で1,000メートルを10本、これも朝と同様、セット間に1分間のリカバリーを入れる
一日おいて
木曜の夕方:3.5mmol/Lの運動強度で400メートルを25本。このセット間のリカバリーは30秒。
というのが「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」で使われている超具体的な練習メニューです。
ちなみにこのトレーニングメニュー自体、素人コーチが作ったオリジナルメニューではなく、インターナショナル・ジャーナル・オブ・エンバラメント・リサーチ・アンド・パブリックヘルスという健康科学を取り扱う学術誌に実際に掲載された研究を元に作られたメニューだったりします。
というバリバリの科学的視点を取り入れたのが、実はこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」の最大の特徴。
2.5mmol/Lや3.5mmol/Lという聞き慣れない言葉たちを。
これがまさしく真骨頂。
このミリモル(mmol/L)という言葉やその前にある数値が何を意味しているのか?これがまさしく「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」を語る上での鍵。
それが血中の乳酸濃度の値、つまり乳酸値です。
では、この血中の乳酸濃度、乳酸値は何を表しているのか?
それこそが、ズバリ、運動強度。運動の負荷、カラダにとってのトレーニングのしんどさです。
従来の科学的トレーニングでは心拍数などを使って、これらのしんどさや運動負荷を数値化します。もしくは、自覚的運動強度とよばれる主観的な指標と心拍数を連動させたスウェーデンの研究者が開発したその名も「ボルグスケール」などを活用したりもします。
よりマニアックなものでいえば、こちらの動画でも紹介したパワー、仕事率と呼ばれるものをワット数を用いて数値化したりもします。
これらの客観的なデータを比較してトレーニングの出来を目に見える形で評価するというのがいわゆるスポーツ科学。
個人的な感覚、主観に頼らない「再現性」を追求したトレーニング手法です。
と聞いて、
なるほど!使えそう!
と思うのは要注意。実を言えば、これらの数値、心拍数やワット数の最大の問題点。それこそが最も根幹に関わるこのキーワード。
再現性
これらの数値は再現性が低いことが最大の問題点だったりするのです。
ちなみにこの話題に関して「なぜ再現性が低いのか?」「ロードバイクとランニングとの間、競技間でのワット数の捉え方の違い」などのややマニアックな話は以下で補足しておきます(読み飛ばしてOK!)。
Q:なぜ心拍数の再現性は低いのか?
A:心拍単独では、自分のトレーニングゾーンがわかっていたとしても、パフォーマンスについての情報は得られません(最後尾と優勝者の心拍数が同じ場合あり)。日常的にトレーニングを行っている、競技歴の長いシリアス・アスリートの場合、体力が変化したとしても心拍数は目につくほどは変わりません(50を過ぎても速く!p140参照)。また、日内変動によっても数値が上振れしたりする場合も多々あり。以上から再現性が低く、あくまで補助(サブ)という位置づけ。
↓50を過ぎて速く!FAST AFTER 50↓
Q:ロードバイクとランニングとの間、競技間でのワット数の捉え方とは?
A:歪みゲージを内臓しているかどうか。ロードバイク(パワーメーター)は正確にパワーを計測できる歪ゲージを内臓しているが、ランニングでは歪ゲージではなく各社独自のアルゴリズムによってパワーの近似値を算出しているから。よくわからない方は上記の「ランニングに使えるものさし(パワー)」の動画か、以下のブログをご覧ください。
~補足ここまで~
心拍数やワット数を含め、その中でも科学的トレーニングに必須の再現性を完璧に担保できるものさしこそ、血中の乳酸濃度、乳酸値。何を隠そう、「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」で登場した例の言葉。
ミリモル(mmol/L)と呼ばれる尺度なのです。
このミリモルという単位は血中の乳酸値に対応したものさしという捉え方でまずはOK。難しいと思う必要は皆無で、「そんな測り方、ものさしがあるのだな~」程度の理解で大丈夫です。
重要なのは「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」とよばれるトレーニング手法はこの血中の乳酸値を完璧に把握して、コントロールすることがカギ。
厳密に設定された乳酸値に沿ったトレーニングがこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」の最強たる由縁、特徴なのです。
そして、これが最大のデメリットにもなりうる。
もし本物の「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」を行おうとすれば厳密な数値が要求されるのです。
なんとリカバリー間やトレーニング後には必ず耳たぶや指先から専用の器機を使って血液サンプルを入手しないといけない。
これによって、確実性のある、言葉を換えると再現性のある数値をもってトレーニングを計画、実施できる。
何を言っているのかあまりピンとこない方は百聞は一見にしかず。
実際のトレーニング風景、冒頭で話したノルウェーの新星ヤコブ・インゲブリクトセン選手やトライアスロン金メダリスト、クリスティアン・ブルンメンフェルト選手のトレーニング動画を以下に載せておきます。
これを見れば、どうやって乳酸を測っているのかすぐに理解でき、トレーニングってこんな感じなのかという雰囲気がわかります。
↓【実際のトッププロのトレーニング風景】ヤコブ・インゲブリクトセン↓
30:35あたりから乳酸値測定。心拍数、ワット数、乳酸まで全ての科学的ものさしを使っているさすがスポーツ科学大国ノルウェー!!てか、メニューもエグ過ぎ……そして、心拍数低すぎ笑
↓【実際のトッププロのトレーニング風景】クリスティアン・ブルンメンフェルト↓
13:40~、16:20~から乳酸値測定。腕についている黒い円盤は血糖値を測定する専用の器機(マラソン金メダリストエリウド・キプチョゲも使用しています)。
6:36~から乳酸値測定。こちらはロードバイクトレーニングでの実用例。
というように、本来の「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」はガチの専門家が同行して(もしくは選手自身が)数値ベースでトレーニングを管理するという
これぞ!スポーツ科学
と呼ばれる手法をとります。
もうお気づきのようにそんなものいち素人がまねできない。
ここが最大のデメリットです。
もちろん現在の最新テクノロジーを駆使すれば、近似値と呼ばれるそれらしい数値を血液を採取しなくても把握することは可能です。が、やはり誤差が結構大きい。血液採取に勝るものは存在しないため、これらのテクノロジーを使ってもおそらく心拍数レベルの精度に落ちてしまうというのが、僕の個人的な感想です。
よって、本当の「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」には確実な血液サンプルから乳酸値を測るという超絶高いハードルが悲しくも存在しています。
と聞いて、
そんなの出来ないし、無理!
となった方はもう少しお待ちください。
この「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」にとって一番重要なのは、乳酸値ではなくもっと大元にある考え方の方だから。
ここを理解することで、「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」のエッセンスを抽出でき、自分のトレーニングに応用したり活用したりすることができます。
ミリモルなどの数値はあくまでものさしに過ぎません。
これこそが「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」の核となる部分。
【長時間のジョギングをしろ!】ノルウェー式トレーニングの核心
実はここまであるひとつの重要な部分に触れていませんでした。
この「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」というものの正式名称が
多い練習量と低強度で行うアプローチを含む乳酸を基準とする閾値インターバルトレーニング
ズバリ、先程紹介した乳酸値を基準にして作られたトレーニングメニュー。
その元ネタになった研究のタイトルが実はこんなもの。
多い練習量と低強度で行うアプローチを含む乳酸を基準とする閾値インターバルトレーニングは長距離走トレーニングの進化における次のステップを代表するのか?
長ったらしいタイトルですが、まあ、つまり「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」は次世代の長距離走トレーニングの代表格、象徴になりえるのか?に迫った面白い研究がこの論文の主旨。
このノルウェーメソッド・ノルウェーモデルには先程の乳酸値で指定されたトレーニングと対をなす、ある練習メニューが実は存在します。
つまり、ニコイチ。どちらが欠けても成り立たない。二つで一つ。
一つ目が先程の乳酸値を基準とした科学的トレーニング。
では、次世代のトレーニングと称されるこのトレーニング理論のもうひとつの柱とは一体どんなものなのか?
それがタイトルにもある、この言葉。
a High-Volume Low-Intensity
日本語では、「軽い強度での多い練習量」
高強度や中強度の比較的しんどいトレーニングではなく、本当に軽いジョギングをメインに行う。
具体的には
エリートランナーは走行距離にして週に120〜180kmを走る。若い選手でも週に115〜145km。時間にしてエリートは1週間に30時間以上。
ちなみに論文では典型的な1週間のトレーニングにおいて、合計約110マイル、キロ換算で約177kmを主にジョギングペースの軽いランニングに充てています。
このような軽いジョギングを最大限取り入れつつ、先程あげた乳酸値をベースにしたインターバルトレーニングを週に3~4回、それに加えて週1回のVO2max強度のセッションを導入する。
より厳密に言えば、ピーキングと呼ばれるレース本番に最大のパフォーマンスが発揮できる状態にピシャリと合わせる手法も組み込まれ、時期によってインターバルの質が変動したり、量自体も調整が入ります。
という意味からトレーニングでよく言われる「質と量」
この量をメインにその中で科学的に管理された質の高い練習を行っていくのが「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」であると言えそうです。
『多い練習量と低強度で行うアプローチを含む乳酸を基準とする閾値インターバルトレーニングは長距離走トレーニングの進化における次のステップを代表するのか?』
Does Lactate-Guided Threshold Interval Training within a High-Volume Low-Intensity Approach Represent the “Next Step” in the Evolution of Distance Running Training?
↓元論文↓
ノルウェー式トレーニングの秘密に迫った興味深い論文。様々なブログなどで大まかな知識を手に入れてから読めばより理解しやすいと思います。より専門的な知識を深ぼりたい方は文末にあるレファレンス(参考文献)から個別の研究を漁ってください!
【科学的解説】なぜノルウェー式トレーニングで速くなるのか?
このようなトレーニングを行うことで、「運動単位」と呼ばれる1本の神経が支配できる筋肉のキャパが増えたり、筋肉の収縮に必須のカルシウムとadenosine monophosphate activated protein kinase (AMPK)と呼ばれる酵素の伝達経路を最適化でき、結果、ミトコンドリアを劇的に増やせるかもしれないというのがこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」の裏に潜む科学的なロジックのようです。
何が言いたいのかというとノルウェーメソッド・ノルウェーモデルは筋肉を動かす神経の機能をアップさせ、さらにマラソンに必須のエネルギー発電所であるミトコンドリアの数も激増させる。
よって、インゲブリクトセン兄弟とブルンメンフェルト選手などのスピードと持久力を兼ね備えた最強のアスリートが誕生した。
この事実から、次世代の長距離走トレーニングの異名がついているのです。
ちなみにこれはランニング以外のその他の持久系競技にも応用でき、実際にこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」をロードバイクトレーニングの視点から解説したわかりやすい記事なども存在しています。こちらも合わせて以下に貼っておきます。
↓ノルウェー式トレーニングをロードバイクトレーニングの視点から解説しているわかりやすいブログ(英語)↓
と、ここだけで話を終えると、正直誰でも同じ内容を言えるため、ここからもう少し深ぼります。
先程登場した「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」を行うことでアップする長ったらしい AMPKと呼ばれる酵素はこちらの動画で軽く触れた「なぜトレーニングを行うと能力がアップするのか?」という練習の根っこにあるPGC-1αというマスターキー。
このマスターキー的な物質の能力を底上げするひとつのカギでもあります。
つまり「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」を行うと、AMPKと呼ばれる謎の酵素が良い感じに働くことで、さまざまな能力アップにつながるPGC-1αと呼ばれる細胞にあるマスターキーの性能が爆上がりする。
そのようなイメージです。
このマスターキーは「マスターキー」という名のごとし高性能で筋肉に必須、いや全ての生物に必須のタンパク質を作る速度を上げます。だからこそ、転写活性化補助因子といういかつい名前まであるのです。よって「PGC-1αでトレーニングが語れる」というのがこちらの専門家でも語らないと銘打った動画の内容の一部。
ということで「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」を行うことで、カルシウムやAMPKと呼ばれる酵素の流れがスムーズになり、結果、マスターキーであるPGC-1αの量もアップ。このPGC-1αはマラソンに必須のミトコンドリア自体を作るタンパク質アップにつながっているため、ミトコンドリアの量ももれなく激増する。
論文で示唆されているミトコンドリアが増えまくる現象に繋がるのです。
よくゆっくり長く走るトレーニング方法「LSD」などでミトコンドリアが増えるうんぬんかんぬんの「なぜ」はこんな感じの面白い化学反応・代謝反応で説明できるのです。
【LSDの生みの親】ゆっくり走れば速くなる 佐々木功監督が教えるマラソン最強トレーニング
このあたりは結構難しいですが、とても面白い分野なので、気になる方は初学者にもおすすめな書籍をページ数とともに概要欄で紹介しておきます。よりミクロな運動生理学的視点でスポーツを深ぼりたいアスリートは必読です。
↓PGC-1αやAMPKについての知識は以下の書籍がおすすめ↓
詳しくはp231~236を参照。分子生物学的視点・細胞生物学的視点でトレーニングが語られており、初学者にもおすすめ!
【マラソン練習にも使えるランニングを使ったHIIT】1日4分 世界標準の科学的トレーニング 今日から始めるタバタトレーニング
このノルウェー式トレーニングの要である乳酸値を完璧に把握したメニューにより、適切にトレーニングの質をコントロールすることで、ケガのリスクを減らし、より素早い回復を実現。結果、トレーニングの量を増やすことができる。
よってこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」は比較的トレーニング強度は低いにも関わらず、スピードの絶対速度が上がり最速ランナーを生み出すことができる。いや、実際に出来た。
「量と質」お互いがお互いを科学的手法を使って補完し合い、「そんなレベルのトレーニングで速くなるわけない!!」を可能にする。
拡大解釈をすれば、50歳でフルマラソン2時間38分48秒を叩き出した運動生理学者の田中宏暁教授がほぼほぼスロージョギングだけで速くなれたのもこの文脈を使えば実は説明可能なのかもしれません。
>>【なぜ??】スロージョギングだけでフルマラソン2時間40分切り(サブ40)を達成出来たのか
という意味でも、やはり冒頭で指摘した「車輪の再発明」という言葉がピッタリのような気もします。
ちなみにかなり昔に作ったスロージョギングと乳酸値に焦点を当てたこちらの動画。この動画は大枠で捉えれば、結構良い線までいっていたのかもしれません。もちろん「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」の予備知識はない状態で作りました。
乳酸値に焦点を当てたという意味で「的を射た」という感じの表現をしていますが、実際のスロージョギングトレーニングはおそらく後述するポラライズドトレーニング(二極化トレーニング)ではないため、高回転のピッチ走法による乳酸の貯まり具合が個人的にはミソだと思っています。詳しくは以下の動画をご覧ください!
↓【ネイチャー誌】スロージョギングでのピッチ走法に迫った動画↓
日本人が大好きな根性論 「量も質も追い求める」
絶対的スピードやきらっと光る才能が存在していたとしても、ケガを繰り返しその才能を発揮できずに終わってしまう。遺伝的にケガがしにくい才能が独り勝ちしてしまう従来のトレーニングに潜む悲しきデメリットを克服できるかもしれない。
これが僕がいろいろと調べて感じた「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」の最大の良さであり面白さだと思いました。
★提言★
誰でも簡単に血中乳酸値測定ができる環境を!
インゲブリクトセン選手をはじめ海外では選手自身が簡単に測定できる環境のようなので、日本でも講習等を受ければ、測定キット購入を含め「誰でも」血中乳酸値測定ができる環境づくりが必要だと思いました(糖尿病患者のインスリン自己注射みたいに!「血中乳酸値測定は緊急性・必然性がないじゃないか!」というツッコミはなしでお願いします)
怪我によって選手の才能が潰れる前に……もしかすると科学を使えばもっと才能を開花させ、輝ける選手が多くなるかもしれません。
そんなきっかけづくりになれば良いな~という思いも実はこのブログには込められています。
と言っても、これはあくまで世界のトップレベルで戦うプロ中のプロの話。
ここからはプロではなく我々一般人にとって、どのような感じでこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」のトレーニングが応用できるのか?を具体的な数値とともにザックリと解説していきます。
【応用編】一般ランナーにとってのノルウェー式トレーニングの活用方法
おそらくほとんどの方は乳酸値を測定できるキットを持っていないはずなので、まずは「ものさし」の設定から行います。
ということで一番オーソドックな心拍数で運動強度コントロールを行うのがベターかと思われます。
ノルウェー式トレーニング方法では、おおまかに3つのトレーニングゾーンが定義されています。
②サブスレッショルド(ゾーン2)
③オーバースレッショルド(ゾーン3)
厳密には5つまで分けられる場合もありますが、今回は心拍数ベースなので、あえて3つに分けます。
大半のトレーニングはゾーン1の低強度で行い、重要なポイント練習はゾーン2、ややきついもしくはきついゾーンで行います。先程の論文ではゾーン2(ややきつい、きつい)に相当するのが乳酸値を使ったインターバルトレーニングで、ゾーン3(死ぬほどきつい)に当てはまるのがVO2MAX(最大酸素摂取量)に焦点を当てたトレーニングです。
本来はトレーニング全体とややきつい、きついトレーニングであるゾーン2にも二つの乳酸値設定が存在していることから、ダブルスレッショルド(二重閾値設定)というキーワードが存在しています。が、ここを深かぼりすると難しくなるので、以下に参考資料を置いておきます。しっかりと理解したい方は専門家に尋ねることをおすすめします。独学の方は従来の乳酸値トレーニング理論をひっくるめて冒頭で紹介した論文もしくは以下の資料をご参考下さい。
↓二重閾値設定に焦点が当てられたレビュー論文(Norwegian double-threshold method in distance running)↓
様々な情報を調べた結果、ゾーン2の閾値インターバルでもふたつの閾値設定をしたり、ガチの専門家は漸進性の原則に則ってより狭い範囲で上手い具合に運動負荷を設定・管理している印象を持ちました。また、ジョギングなど低強度トレーニングにおいてもAeT(有酸素性作業閾値)などを意識した運動負荷管理が行われている印象です。この辺りは知識うんぬんより実際に現場に入らないとわからない実務的なものだとも思います。ノルウェー式トレーニングは数値を追うだけではない「奥深さ」が詰まっている印象です。それがこのトレーニングの最大の面白さ!やってみたい!
ということで、具体的な心拍数設定として、ゾーン1の場合。
ウォーキングやジョギングなど、心拍数が安静時の1.2〜1.5倍程度の運動を1日30分〜1時間、週3〜5日行うとのこと。
ここはくれぐれも速く走って心拍数を上げるのはダメです。あくまで軽く走るのが目的。
距離や時間を稼ぐ目的でフォームに焦点を当てながら走ってみてください。
次はゾーン2。
このゾーン2は最大心拍数の62〜82%の強度を目安にトレーニングを行います。もちろんこれはあくまで目安。心拍数の再現性高くないため、厳密な運動強度の管理が難しいことは頭の片隅に置いといてください。
具体的なメニューは冒頭に紹介した週に2回の朝と晩の閾値インターバル、これのボリュームを落とした形で実施してみてください。
最後にゾーン3。これは全力に近いハイペース。具体的には最大心拍数の82〜92%の強度。ここも一般ランナーが行う場合はトレーニングのボリュームは落としてください。
この絶妙なバランスで走力の基礎を作り、レースが近づくとレースペースに焦点を当てたトレーニングに移行していくというような流れです。
この流れをより具体的に週にあてはめると月曜日、水曜日、金曜日、日曜日は長距離・長時間の軽いジョギング。
火曜日と木曜日は朝と夕方に閾値インターバルを実施、土曜日は短い距離の坂道ダッシュなど、より激しいVO2MAXトレーニングを行う。
つまり、週に4日は長距離・長時間の軽いジョギング。間の二日に閾値インターバル。ここは連続ではなく1日開ける。そして、閾値インターバルで間に1日ジョギングを挟んで、それからガッツリスピード練習。
一日単位のイージーハードの繰り返しのようなイメージです。
本数や時間はそれぞれ各自のレベルに合わせて調整してください。ここで無茶をするとケガをするのでそこだけは要注意。
これが一応の一般ランナーを対象としたノルウェーメソッド・ノルウェーモデルの具体的トレーニングメニューです。
が、何度も言いますが、この本来のトレーニング方法は厳密な科学的なものさしである乳酸値を絶対的な指標として、ガチガチの数値として設定している点で従来のトレーニング方法と一線を画しているのが特徴。
よって、極論を言えばペースやスピード、心拍数などのものさしを全て捨て去り、乳酸値に全振りしなければならないトレーニングであるということは覚えておいてください。
という意味合いでトレーニング自体、トレーニング理論としての再現性は結構高いと考えられますが、実際にトレーニングを行うという現実性に関しては再現性がかなり低いトレーニングであると僕は思います。
なぜなら、乳酸値を測定する専用のキットと運動生理学のバリバリの知識が必要だから。
先程もご紹介しましたが、田中宏暁教授の偉業、50歳でフルマラソン2時間38分48秒を達成。この記録をスロージョギングだけで達成できるのか?に焦点を当てたこちらの動画で結構、ガッツリと乳酸について深ぼっているので、気になる方はそちらから基礎知識をゲットしてみてください。
と言っても、コメントでも指摘されたのですが、はやり難しくならざるを得ない。個人的には簡単に解説したつもりだったのですが、どうしても難しくなるのが、乳酸(厳密には水素:プロトン)というカラダの限界を規定している、もしくはマラソンでエネルギー源となる超がつく面白い物質です。よって、内容を理解するというよりはその複雑さ自体を感じ取って頂ければそれでOKだと思います。
>>なぜジョギングだけでフルマラソン3時間切り(サブ3)を達成できるのか?
「複雑すぎてなんだかよくわからない」というのが正解であるということは補足しておきます。
以上が「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」、ノルウェー式トレーニング方法と呼ばれる近年、脚光を浴び、スポーツ科学の権威に
どこもかしこもノルウェーばかり
と愚痴をこぼさせるレベルで大流行したトレーニング方法、トレーニング理論です。
【これぞ科学!】専門家も語らないトレーニングの本質とノルウェー式トレーニングの面白さ
と、最後にこれぞ科学!という「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」に鋭い示唆を投げかけるであろう面白い研究をみなさんに投げたいと思います。
実はこの「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」が車輪の再発明と呼ばれる由縁が、ポラリゼーション、ポラライズドトレーニングと呼ばれる強度の低いトレーニングと強度の高いトレーニングの二軸で行う方法論にあったりします。
「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」も大枠は従来のオーソドックスなトレーニング理論の枠内におさまっている。
ということで車輪の再発明。
が、実は「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」であるこのポラリゼーション、ポラライズドトレーニングが実は持久系アスリートにとって最適ではないと指摘している研究もあるのです。
その名も『二極化トレーニング(ポラライズドトレーニング)は持久系アスリートにとって最適ではない』というド直球なタイトル。
この論文では
中程度のきつさのトレーニングも非常に効果的であり、排除すべきではない
と指摘されています。
厳密にいえば、僕の解釈の限りでは「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」はかなり上手くこの二極化トレーニング(ポラライズドトレーニング)のデメリットをカバーしている印象ではあります。
が、この論文を使えば「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」のような低強度と高強度の組み合わせは本当に効果的なのか?という切り口でも使えるのです。
これぞ科学!
答えはそもそも存在していないのではないか?もっと言えば、答えはひとつではなく100人いれば100通りあるのではないか?
ここです。
現在の日本の学校教育では必ず明快な答えが設定され、いかに素早く相手が望んでいる答えにたどり着けるかのある種のテクニックゲームです。
だからこそ、明快な答え、○か×か、ゼロか百かの答え、白か黒かの答えをぼくを含む多くの人があると盲信し、求め続けています。
我々のカラダやトレーニングには絶対的な答えなんて存在しないのです。
科学というのは現象を多面的に切り取る方法論でしかない
ここを勘違いして、科学的という言葉を使って学校で教えてくれるような単一の明快な答えを導こうとしている人がかなり多いというのが僕の感じていることです。
という意味でも、「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」などの二極化トレーニング(ポラライズドトレーニング)とそれを批判するこちらの論文
「二極化トレーニング(ポラライズドトレーニング)は持久系アスリートにとって最適ではない」と銘打った研究には価値があると個人的には考えています。
↓ノルウェー式トレーニングに鋭い示唆を投げかける研究↓
『二極化トレーニング(ポラライズドトレーニング)は持久系アスリートにとって最適ではない』
Polarized Training Is Not Optimal for Endurance Athletes
↓元論文↓
人間は自分の信じたいことしか信じない生き物なので多面的な角度から物事を捉えることが重要。的を射ている批判的な意見は価値あり!ちなみにこの研究からノルウェー式トレーニングに焦点を当てた考察は(海外を含めて)皆無。完全オリジナルです。
このように俯瞰的に見ると、やはりトレーニングには正解は存在しなく、言葉を換えれば全てが正解で、そこに流行、流行り廃りが存在していることもうなずけるかと思います。
ということで、次は科学で装飾された中強度に特化したトレーニング手法や理論、はたまたタバタトレーニングなどの高強度のみのガッツリしたトレーニングが一世を風靡するかもしれません。というか、もうしているかもしれません。
どうでしょうか?
そのような文脈で捉えると「ノルウェー式トレーニング」の位置づけや流行は結構、面白くはないでしょうか?
今回は、「ノルウェーメソッド・ノルウェーモデル」というものを切り口にトレーニングというほんの数百年前に誕生した人類しか行わない謎のムーブメントと、そのノウハウの裏にある文脈や細胞に隠された機能などに焦点を当ててみました。
ノルウェーメソッド・ノルウェーモデルを通して壮大なトレーニングの面白さ、深みみたいなものを少しでも感じて頂ければ幸いです。
最後に僕の大好きなこんな名言で締めたいと思います。
トレーニング計画という、みずからの生物学的探求に出かけたことのない人は、すばらしい自己変革の機会を逃している(スポーツ遺伝子は勝者を決めるか?アスリートの科学p467から引用)
是非、みなさんも楽しくトレーニングをしていきましょう!
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